コロナ禍に突入以来、従来のオペレーションとの違いから、歯車がうまくかみ合わない点なども生じているだろう。また一方で、「コロナ慣れ」とも言うべき「隙」や「緩み」が生まれてはいないだろうか。
今、一般に感染防止対応が、現場に二つの弊害をもたらしている。「非効率化」と「品質低下」だ。感染防止のためやむを得ないこと、またこの機に積極的にやっていくべきことも含まれるが、流れに任せ過ぎて本質を見失うことのないよう気を付けたい。
(1)コロナ対応にかまけない
感染防止のためにとっている対応が行き過ぎ、接遇などが度を越して粗略になっていないだろうか。
例えば、フロントなどに防護スクリーンを設置するところも多くなったが、もともとカウンターから出て到着客を迎えていた旅館が、これを設置した途端にカウンター内に引きこもるようになり、素っ気ない出迎えになってしまっているというケースがある。また、料理の説明などが省かれた結果、気が付けば食事場面でお客さまとの「接点」がほとんどなくなっているケースもある。さらに、館内いたるところが予防対策を呼び掛ける貼り紙だらけ。お客さまは何をしに来たのか分からない、というところも…。
現在の状況に受動的に対応しているだけだと、提供商品の質はおそらく確実に劣化する。次のようなことを考えたい。
・接客品質の向上―手間をかけるのでなく好印象を与える接客、不満をもたらさない接客
・料理品質の向上―おいしい料理をおいしく、心に残る料理として食べていただく提供のあり方
・館内環境品質の向上―清掃・美化、美意識とセンス、神経を行き届かせる
(2)「ルーチン化」から「効率化」へ
検温、手指消毒のお願い、チェックイン手続きなど、大方の旅館が、感染防止対応には一通り慣れたことと思う。だがこれらはもともと無かった手間であり、ほとんどのことはまず本来的な「価値」を生んでいない。
「やること」に慣れたら、次には「やり方」をもう一度見直し、より効率的に行うことを考えよう。ルーチン化したら効率化を考えること、これは生産性向上の鉄則だ。
例えば、感染防止策を実直に講じている旅館では、館内至るところの消毒作業を行っていることと思うが、消毒すべき物品そのものの数を減らすことで、作業の手間を減らすことはできないか、といった発想もしてみよう。
「新しい生活様式」はいつまでも「新しい」ではない。いわば「新たなルーチン」に浸りきってしまうことに注意したい。
(3)危機意識の共有
Go Toトラベルで忙しくなっているかもしれないが、これはあくまでも「一時的なカンフル剤」効果に過ぎず、基本的な状況はまだ決して好転したわけではない。むしろ「山高ければ谷深し」で、終了後には間違いなく反動がやってくる。
依然として「ウィズコロナ」の真っただ中にあることを正しく認識して、社員にもそのような緊張感を持ってもらうことが大切…否、必要である。
経営者は「現状の池」に「引き締めの石」を投げこみ、「活性化の波」を立てることを常に意識していただきたい。
(株式会社リョケン代表取締役社長)