【旅館はもっと良くなるべきだ 旅館経営 タテ・ヨコ・ナナメ 130】新型コロナウイルスへの経営対応17  コロナマンネリに注意 リョケン代表取締役社長 佐野洋一


 コロナ禍に突入以来、従来のオペレーションとの違いから、歯車がうまくかみ合わない点なども生じているだろう。また一方で、「コロナ慣れ」とも言うべき「隙」や「緩み」が生まれてはいないだろうか。

 今、一般に感染防止対応が、現場に二つの弊害をもたらしている。「非効率化」と「品質低下」だ。感染防止のためやむを得ないこと、またこの機に積極的にやっていくべきことも含まれるが、流れに任せ過ぎて本質を見失うことのないよう気を付けたい。

 (1)コロナ対応にかまけない

 感染防止のためにとっている対応が行き過ぎ、接遇などが度を越して粗略になっていないだろうか。

 例えば、フロントなどに防護スクリーンを設置するところも多くなったが、もともとカウンターから出て到着客を迎えていた旅館が、これを設置した途端にカウンター内に引きこもるようになり、素っ気ない出迎えになってしまっているというケースがある。また、料理の説明などが省かれた結果、気が付けば食事場面でお客さまとの「接点」がほとんどなくなっているケースもある。さらに、館内いたるところが予防対策を呼び掛ける貼り紙だらけ。お客さまは何をしに来たのか分からない、というところも…。

 現在の状況に受動的に対応しているだけだと、提供商品の質はおそらく確実に劣化する。次のようなことを考えたい。

・接客品質の向上―手間をかけるのでなく好印象を与える接客、不満をもたらさない接客

・料理品質の向上―おいしい料理をおいしく、心に残る料理として食べていただく提供のあり方

・館内環境品質の向上―清掃・美化、美意識とセンス、神経を行き届かせる

 (2)「ルーチン化」から「効率化」へ

 検温、手指消毒のお願い、チェックイン手続きなど、大方の旅館が、感染防止対応には一通り慣れたことと思う。だがこれらはもともと無かった手間であり、ほとんどのことはまず本来的な「価値」を生んでいない。

 「やること」に慣れたら、次には「やり方」をもう一度見直し、より効率的に行うことを考えよう。ルーチン化したら効率化を考えること、これは生産性向上の鉄則だ。

 例えば、感染防止策を実直に講じている旅館では、館内至るところの消毒作業を行っていることと思うが、消毒すべき物品そのものの数を減らすことで、作業の手間を減らすことはできないか、といった発想もしてみよう。

 「新しい生活様式」はいつまでも「新しい」ではない。いわば「新たなルーチン」に浸りきってしまうことに注意したい。

 (3)危機意識の共有

 Go Toトラベルで忙しくなっているかもしれないが、これはあくまでも「一時的なカンフル剤」効果に過ぎず、基本的な状況はまだ決して好転したわけではない。むしろ「山高ければ谷深し」で、終了後には間違いなく反動がやってくる。

 依然として「ウィズコロナ」の真っただ中にあることを正しく認識して、社員にもそのような緊張感を持ってもらうことが大切…否、必要である。

 経営者は「現状の池」に「引き締めの石」を投げこみ、「活性化の波」を立てることを常に意識していただきたい。

(株式会社リョケン代表取締役社長)

 
新聞ご購読のお申し込み

注目のコンテンツ

第37回「にっぽんの温泉100選」発表!(2023年12月18日号発表)

  • 1位草津、2位下呂、3位道後

2023年度「5つ星の宿」発表!(2023年12月18日号発表)

  • 最新の「人気温泉旅館ホテル250選」「5つ星の宿」「5つ星の宿プラチナ」は?

第37回にっぽんの温泉100選「投票理由別ランキング ベスト100」(2024年1月1日号発表)

  • 「雰囲気」「見所・レジャー&体験」「泉質」「郷土料理・ご当地グルメ」の各カテゴリ別ランキング・ベスト100を発表!

2023 年度人気温泉旅館ホテル250選「投票理由別ランキング ベスト100」(2024年1月22日号発表)

  • 「料理」「接客」「温泉・浴場」「施設」「雰囲気」のベスト100軒