(26)業務シフトの組み立て方
マルチタスク化を図るには、人の多能化がまず必要である。そして、その人材を業務シフトの中に当てはめていく必要がある。この前提をもとに、前々回、前回は「多能化を実現する要件」についてお伝えした。続いてこれを業務シフトに組み込む―すなわち「業務シフトコントロール」を組み立てる方法について考えていきたい。
(ⅰ)シフト対象とする部署・業務の設定
業務にはそれぞれ担うべき部署があって、それを他部署が協力・応援するというのが、業務シフトの一般的な導入形態となる。(※)
その場合、「どの部署のどの業務を、どの部署が応援するか」ということを、まず決める。応援を受けるのは多くの場合、食事提供に関わる部署・業務であろう。食事は旅館での滞在中最大のイベントであり、短い時間に最も業務の集中するサービスなので当然だ。
一方、応援するのは一般にフロント、予約、施設管理、清掃(内務)といった部署になる。
しかし、ともにそうと限ったことではないので、シフトを設定する対象はそれぞれ実情に応じて検討いただければよいかと思う。
(ⅱ)応援する業務の数
これは1人につき一つか二つ、最大でも朝を含めて三つ程度が妥当と考える。
仮に各スタッフにいろんな業務能力が備わっているとしても、あまり多くの掛け持ちは、シフトのタイム割りが複雑になり過ぎる。よほど精緻な計画をしない限り、作業時間が予定より食い込んで、次のシフトに入れないなどの破綻をきたす恐れがある。
また現場には指揮命令系統があり、それぞれ管理監督者がいるので、それが時間帯ごとにめまぐるしく入れ替わるのは、切り替わりの接点においてトラブルも起こりやすい。
加えて、これが重要なことだが、スタッフ一人ひとりのモチベーションにも配慮する必要がある。人は機械ではないのだ。
(ⅲ)業務と人員の全体像把握
忙しさは日によって当然違うので、日ごとに業務のボリュームを測り、当該部署の出勤人数に照らして、必要となる応援人数(人時)を算定する。
必要人員の予測については、その日の客数、食数、卓数、部屋数、布団数など、なるべく客観的な数字に基づいて割り出すことが望ましい。その際、より正確を期するには、本連載<55>((22)標準時間にもとづく人員配置)でお伝えした方法をご検討いただきたい。
※旅館によって、また業務によっては、そもそも特定の部署の担当とせず、最初からいろんな部署の人で行うというやり方もないわけではないが、責任の所在が曖昧になることが多い。
(株式会社リョケン代表取締役社長)