(10)独自価値を育てよう
「独自価値」は永久に有効ではあり得ない。常に磨き、育てていく必要がある。最初に築き上げる段階でもそうだが、独自価値を「よそに負けない価値」として育てるためには、以下に挙げるいくつかのことを意識していきたい。
(イ)コストを掛ける
独自価値は当館の競争力となるもの、収益を生み出す源泉となるものである。そこにはしかるべき資金投入をしたい。全てに節約ばかりでは道も開けない。これは費用でなく投資なのだ。中途半端だと、せっかくの価値ネタが不発に終わる場合もある。
(ロ)手間を掛ける
掛けるべきはお金だけではない。むしろお金だけで実現できることは独自価値となりにくい。「お金をかけてできることは、どこにもできること」と考えた方がよい。
モノ選びにはこだわりを持とう。より良いものとするための知恵を出し、試行錯誤を繰り返そう。ものによっては研究開発の手間を掛けることだ。掛けた手間だけ価値は強くなるはずである。
(ハ)自信・誇りを持つ
独自価値を支える最大の動力源は、それに対する自信と誇りだ。しかしそういうものは、導入時には意気も上がるが、得てして時間の経過とともにしぼみ、意識されなくなってしまう。そうなると、同じ価値でも効果は半減する。だから社内に向けてはその価値を何度でも繰り返し伝えて、常に新鮮な「意識の注入」を図りたい。そうして自信と誇りを染み渡らせるのだ。
ただし、その価値を過信しない注意も必要である。過信は「驕り(おごり)」につながり、独自価値のつもりが「独善価値」となりかねない。「驕り」と「誇り」は別物なのである。
(ニ)評価・名声を勝ち取る
社会的な評価は価値を一気に高める。社員にとっての自信や励みにもなる。表彰やマスコミ紹介など、名声を勝ち取る算段をしよう。身近なところでは、クチコミ評価のコメントや、評価点数のアップなども使えるだろう。またコンクールへの応募、マスコミへのニュースリリースなども積極的にやっていくとよい。その際のコツは、ただ「こんなことを始めました」ではなく、考え方、ポリシー、実現に至る紆余(うよ)曲折といった「背景」を一緒に伝えることだ。
(ホ)磨き続ける
独自価値とはいえ、よほど独創的なものでない限り、似たような価値は世の中にいくつもある。またそれがうまく評判を得たとしても、「これが効果がありそうだ」と見れば、競争相手はすぐに同じことをやってくるだろう。簡単に実現できるものは、それなりに短い「価値寿命」しか得られない。だから常に磨きをかけ続けることが大切である。
本当にそこで勝負しようと考えるなら、競争相手をはるかに上回る執着をもって、競争相手が追いつけないスピードで価値に「磨き」をかけていくことである。同じ価値の領域においてライバルと目されるものがあれば、その価値をベンチマーク式に比較し、徹底的に凌駕(りょうが)していこう。ただしそれはなにも、去年買ったものを今年また最新のものに買い換える、といったことではない。カギとなるのは「価値のコンセプト」だ。
(株式会社リョケン代表取締役社長)