【旅に出よう~温泉は日本の宝~ 92】若い女性が求める温泉地、旅館像 その2 山崎まゆみ


 跡見学園女子大で155人の履修生がいた「温泉と保養」の授業では、温泉の歴史を学び、さらにこれから求められる温泉像を伝え、そして最終レポートでは学生さんたちが興味を持つ温泉地や旅館をデザインしてもらい、どうしたら若者が旅先に温泉を選ぶのかを言葉にしてもらいました。前回に続き、彼女たちの温泉への希望を皆さんにお伝えしますね。

 若いからか、発想は豊かでした。長湯をするために映画鑑賞しながら入浴できるお風呂造りという提案は、私もあればいいなと思ったことがありました。でも宇宙旅行に見立てた旅館造りや蛍風呂、プラネタリウム風呂には、そんな発想が! とうなりました。

 と、彼女らの発想の柔軟さは、またの機会に。

 実は、いまの温泉に必要という意見が最も多かったのは、温泉を知る仕組みづくりでした。

 授業では温泉の歴史に触れたところ、まったくと言っていいほど、温泉に対する知識がなかったことには驚きました。「湯治」を知らない学生さんも多かった。「湯治」という文字は見たことがあるけれど、読み方が分からなかったという学生さんが多数いました。

 歴史、温泉法や泉質などの基礎的知識を身につけた上で、「マイ温泉」という考え方を伝えました。温泉に入ればきれいになる、健康になるという表層的な効果ではなく、歴史背景や湯そのものを深く知ることによって、自分に最も適した温泉に巡りあえるという概念です。

 例えば、肌荒れする人には、強い泉質の湯に入ったあとは入念な肌のケアが必要です。人間関係などで心が疲れた人には緑あふれる露天風呂を私は勧めることにしています。その土地の力を得たいという人には、1300年も続く古湯を紹介します。

 そうした、温泉のプロとしてよく求められる「その人にとってベストな温泉を紹介する」ことを一言にまとめたのが「マイ温泉」です。

 学生さんたちは、授業を通して学んだことをたくさんの人に広めたいと言ってくれました。そのためのアプリであったりとか、温泉街にストーリーを作る仕組みであったりとか、はては「全国温泉旅館」をつくるといったアイデアがレポートにありました。「全国温泉旅館」に行けば、日本を代表する温泉地の湯、そして全泉質がそろう。チェックインの際にその日の希望を伝え、肌状態とその日の気分に適した「マイ温泉」でくつろぐというものでした。

 もちろん、泉質によっては劣化も考えられる温泉もあるので、温泉専門家の見地からでは現実性はないと感じましたが、それでも、温泉を選べるシステムの旅館というコンセプトは強く同意します。

 いま、2018年度秋からの「温泉と保養」の授業のシラバスを作っています。来季も若い女性に囲まれ、柔軟な発想に触れる喜びをたのしみにしながら。

(温泉エッセイスト)

 
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