先日、共同通信の配信記事で、私が選ぶ温泉番組特集が組まれました。温泉を紹介することをなりわいにして20年が経ちましたので、経験も踏まえてコメントしました。いい機会だったので、20年を振り返り、温泉番組を考察してみました。
私が仕事を始めた頃、テレビ番組で女性が温泉に入浴しながら専門的なコメントをすることが珍しがられました。1990年代後半は、女性が温泉に入るイメージは11PMの「うさぎちゃん」が色濃く、「温泉を解説する女性」が新しく感じられたのだと思います。この時は、女性タレントが入浴することはなく「温泉に入ってくれる女性」という理由からか、ひっきりなしに、数多の番組からの出演依頼がありました。出演の際に心掛けていたのは、健康的に、かつ気持ちよさそうに見えるように温泉に入ること。視聴者から「この人みたいにたくさん温泉に入ると、こんなに健康的になるんだ」と思ってほしかったですし、「うさぎちゃんとは違うのだ」という私なりの意思表示でした。
テレビ番組の入浴シーンは、1時間ほどカメラを回すこともあります。湯あたりして、倒れたことがありました。一緒に出演していたロンドンブーツの田村淳さんに抱えられ、けがもなく済みましたが。
また、私は入浴する側ですが、それを撮影する制作スタッフは、雪見露天風呂の撮影ですと、凍える日でも裸足のまま仕事をしています。撮影が押すと、スタッフは温泉に入れないことも多く、その姿を見ると「視聴者に伝わるコメントにしよう」と士気が上がったものです。
私が最も大切にした表現方法は「湯けむり」です。入浴しながら、顔回りに上手に湯けむりをつくるのが私の仕事。方法は秘密です(笑)。
近年は女性レポーターも増え、特にここ4~5年は女優さんも温泉に入るようになりました。ずいぶんと変わったのだなとしみじみ見ています。
その背景には、温泉の入浴シーンが「淫靡」なものから「平明」に変化したのだと思います。その一因に温泉番組の男性レポーターの姿を多く見かけるようになったこともあるのでしょうね。NHKの大河ドラマ「八重の桜」で西島秀俊さんの入浴シーンが話題となり、大ヒット漫画「テルマエロマエ」の映画化も大きかったですよね。筋骨隆々の阿部寛さんの惜しげもない入浴場面は、世を変えました。昨年、テレビ東京からは「メンズ温泉」という番組も生まれました。「男性が女性の温泉入浴シーンを見たい」から、「女性もイケメンの温泉入浴シーンが見たい」に変化していますよね。
(温泉エッセイスト)