今でもあの日を鮮明に覚えています。2008年1月18日―。
丸の内の歴史的建造物の1階エントランス、外からすきま風が吹き込み、寒さを感じるはずが、むしろ参加者の熱気でのぼせていました。熱意のある人が集まると、空間をも温めるということを、私は初めて知りました。
第1次YOKOSO!JAPAN大使の任命式があったこの日、金屏風の前に、コシノジュンコ先生、加賀屋専務の鳥本政雄さん、パリから駆けつけた服部祐子さんら総勢17人が並び、当時の冬柴鐵三国交相から一人一人に任命状が手渡されました。
あの日から、もう10年近くの歳月が経ちますが、出会った時に圧倒された熱量は一層増して、皆、外見も老ける様子もなく、時々、異界の生き物かと思います。現在は53人のビジットジャパン大使(以下VJ大使)が名を連ねています。
札幌でのVJ大使の集いは、本紙で特集を組んでいただきましたので、私からはごくごく身内の話を少し。第6回札幌開催までは、大阪、大分、栃木、沖縄、新潟で実施しており、全て国土交通省運輸局さんと共に歩んできました。われわれの交通費、宿泊費は自腹。講演料もいただいておりません。その理由は、どうしても、全国の皆さんにお伝えすべきことがあるからです。
大使たちは、インバウンドという言葉が周知されるはるか前から、20年から30年にもわたり、一途に取り組んでこられました。ご自身の専門の話題なら1日でも2日でもノンストップで話していられるメンバーたち。そんなVJ大使が年に1度、一堂に会すのです。250人参加された北海道の皆さんをのみ込んでしまう勢いでした。
特に、私たちの精神性のシンボルでもあり、30年間シンガポールから訪日客を送客してきた西村紘一大使の力の体験に基づく話は聴衆を引きつけ、一言も聞き逃すまいと、会場は水を打ったような静けさでした。
当日、司会進行役を仰せつかった私は、タイムスケジュール通りに進行するか、時計を見ながらはらはらしながらも、大使たちの言葉を聞き入っていました。それぞれの言葉に力がみなぎっているのは、成功者だからこその自信と、たくさんの失敗から作り上げてきた哲学、そして矜持があるからです。私はVJ大使の皆さんにお会いするたびに、「侍(サムライ)だな~」と口にしてしまいます。
さまざまな分野において第一線で働かれる個性的な大使たち。実は、とても仲がいいんですよ。われわれは“一座”として、毎年、各地域の運輸局さんと共にVJ大使の集いを開催してまいります。われわれがうかがいましたら、心してお迎えくださいませ。(笑)
(温泉エッセイスト)