佐賀県嬉野市観光課からの依頼で嬉野温泉のインバウンド政策に関わらせてもらっています。高齢者や障がい者に優しい温泉地として名高い嬉野温泉には、バリアフリー温泉の取材でも通っています。
インバウンドでの関わりは、熊本地震による風評被害に対して専門家から効果的なアドバイスをする平成28年度九州魅力発信消費拡大事業専門家派遣事業で、嬉野市役所から私に指名をいただいたことに始まります。
この事業で3時間ほどの会議を3回重ねました。参加者は市役所職員、旅館さん、嬉野温泉協会インバウンドチームの皆さん、そしてお茶屋さんもいました。
この会議にいくつか企画を持参しました。中でも最も力を入れて説明したのは、「嬉野美白温泉」です。
元々、美肌温泉をキーワードにプロモーションをしてきた嬉野温泉ならば、やはり「美」をモチーフにしたコンテンツで対外的に嬉野の魅力を伝えるべきだと思っていました。また、これまで何度となくアセアン地域を訪問する中で、特にタイ人女性は、日本の女性の肌の白さに強く興味を持っていることを痛感してきたのです。日本の化粧品ブランドが評価され、売れているのは言わずもがなですよね。
そこで嬉野温泉に滞在すると美白になるというテーマを提案しました。
嬉野には、角質化した肌をクレンジングし化粧の乗りをよくする美肌温泉があります。豆腐に含まれるイソフラボンが女性ホルモンの活性化を促す「嬉野温泉湯どうふ」もあります。加えて、美白効果を高めるビタミンCが豊富な「うれしの茶」が名産。地域の皆さんの守り神として、美肌の神様・白なまずが祀られています。これらを2泊3日の滞在で体験することにより、「嬉野美白温泉物語」としてみたいと提案しました。
すると、「『美白』という言葉はエッジがきいており、女性たちには必ず引っかかると思う。しかし『美白』のエビデンスがないのが気にはなる…」という慎重論や、「現在キャッチコピーにしている“ぷるるん温泉”と『美白温泉』の使い分けはどうしよう」という疑問、また「『美白プラン』を作ったとしたら、嬉野温泉に宿泊する女性客が個人で訪れ、旅館をシングル利用する可能性が出てくる。そうなれば嬉野温泉の旅館としては利益率が低くなるという問題も出てくる」といった意見が出ました。
美白温泉とする科学的根拠をどうするか等の課題はあがりましたが、おおむね感触は良好。私が持参したアイデアの中で「美白温泉物語」が最も嬉野温泉の皆さんに響きました。(次回に続く)
(温泉エッセイスト)