【新春特別座談会】旅館経営者座談会 金谷ホテル観光×松乃井リゾート×瑠璃光・葉渡莉×ザ・サンプラザ

  • 2019年1月3日

求められる人材の確保と未来を見据えた旅館経営

 激変する業界の中、人材確保、育成に取り組みながら結果を残している旅館・ホテルがある。課題をどう克服し未来へつなげるのか。特色ある経営スタイルの旅館・ホテル経営者4氏にお集まりいただき、語ってもらった。司会は本社編集長の森田淳。(東京の観光経済新聞社で)

 ――(司会)まず、自己紹介を兼ねてそれぞれの宿の特徴、経営の状況を伺いたい。

栃木県・鬼怒川温泉 金谷ホテル観光社長 金谷譲児氏

 金谷 金谷ホテル観光グループは、1931年に東武鉄道が鬼怒川温泉をリゾート開発する際に、鬼怒川温泉ホテルを開業したところから始まった。1953年に祖父が、日光金谷ホテルから法人を独立させ、両社が互いに切磋琢磨(せっさたくま)し運営している。バブル崩壊後には地元のメインバンクが破綻。私は2003年ごろに家に戻り、05~09年は企業再生に携わった。10年には再生が終了し、今のグループ体制となった。宿は、鬼怒川に「鬼怒川金谷ホテル」(41室)と「鬼怒川温泉ホテル」(162室)の2軒があるほか、箱根に「KANAYA RESORT HAKONE」(14室)、那須に「THE KEY HIGHLAND NASU」(36室)、伊豆に「THE KEY HIGHLAND IZU」(10室)がある。その5軒のほか、東京都の恵比寿にショコラトリー「JOHN KANAYA」を展開している。グループの強みは、和の情緒と洋の機能性を融合した、独自の和洋折衷感。東洋と西洋が入り交じり、独特な空間を演出する。グループ内の旅館では女将制度を設けておらず、その代わりに各施設が、それぞれのあるべき姿をまとめたブランド・ステートメントを作成し全社で共有している。また、そのステートメントは、時代や状況の変化に応じて、常にアップデートし、共有を行いながら取り組みを進めている。そのようにして出来上がった各施設ごとのブランドやサービスを宿泊する価値として、お客さまに体感していただいている。

群馬県・水上温泉 松乃井リゾート社長 戸澤千秋氏

 戸澤 シーガル・リゾートイノベーションという法人名で、国内4軒、海外1軒を運営している。国内には旗艦店として、群馬県水上温泉に「源泉湯の宿 松乃井」(225室)、松乃井のそばに「源泉湯の宿 千の谷」(110室)、隣の沼田市に「源泉湯の宿 紫翠亭」(47室)、新潟県大湯温泉に「源泉湯の宿 かいり」(50室)がある。また、海外には2017年11月に、ベトナム・ホーチミンに「マツノイホテル」(32室)をオープンした。私は、前オーナーや債権者の要請により、バブル時代に起きた経営破綻後の再建の手伝いで呼ばれた。以後経営を引き継ぎ、11年前にリゾートをイノベーションする企業として現会社を設立した。私自身の役割は、土地の宝である温泉旅館を守り、次の時代にバトンタッチすることだと思っている。松乃井は、建物の長さが450メートル、敷地が4万坪あり、広大な土地を生かした癒やしの空間を演出している。経営は、目指すべき将来像の実現に向け、一歩ずつ着実に進めている。私が引き継いで10年が経過し、売り上げは倍増した。他の観光地や旅館も厳しい現状と聞くが、成長には時間がかかる。地方創生というタイトルもあるが、地方のスピードはそう簡単には上がらない。資金調達をしながら、時間をかけて成長していくべきだ。

石川県・山代温泉 瑠璃光・葉渡莉 社長 萬谷浩幸氏

 萬谷 法人名は、よろづや観光。石川県加賀市の山代温泉で「瑠璃光」(117室)、「葉渡莉」(67室)の二つの旅館を経営している。また、葉渡莉の斜め前にはギャラリー&ビストロ「べんがらや」を営んでいる。4年前に父から会社を受け継ぎ、社長への就任から5年目となる。瑠璃光は大型旅館で、法人、団体をはじめ全国からお客さまが訪れている。「進化する日本の宿」をキャッチフレーズに、既存の旅館の枠に捉われない新しいライフスタイルを取り入れた宿づくりをしている。葉渡莉は、「木のぬくもり、葉のやさしさ」など癒やしをテーマにし、個人、女性から支持を得ている。葉渡莉は、18年に20周年を迎え、添乗員が宿泊する小部屋を1人部屋に改装するなど、新しい切り口の商品やキャンペーンに取り組んでいる。一方、瑠璃光も17年に25周年を迎えており、食事処などを改装している。北陸新幹線は開業5年目を迎え、団体は当初に比べ、反動、落ち込みはあるが、首都圏からは堅調だ。また、山代、山中、片山津、粟津の四つの地元温泉地が「加賀温泉郷」として地域一体となり情報発信、地域活性化に取り組んでいる。

兵庫県・洲本温泉 ザ・サンプラザ社長 樫本文昭氏

 樫本 1958年、教員を務めていた両親が、淡路島の洲本の地に創業した。創業時の旅館名は「観光ホテル淡洲」。以後、ビジネスホテルを二つ増やし、87年には現在の「淡路インターナショナルホテル」へと進化した。54の客室と450平米のコンベンションホールを持ち、淡路島の多くの人が集まり、MICEなど会議に対応できる場所とした。島の東側が大阪湾、西側が瀬戸内海に面する穏やかな海と美しい景観がある中、景色を最大限生かすために全室オーシャンビューとした。「絵画をみているような眺望」をテーマに、窓には大きな1枚の窓ガラスをはめている。オープン当時は団体旅行が盛んで、客室からの動線を大事にした。団体型の旅行は、限られた時間で行動するため、時間が制限された中でも楽しめるように、館内の中心に宴会場、売店、食事処、スナック、当時は珍しいシアターレストランを集め、一つの街を演出した。現在は、団体型から個人型へとシフトし、個人が約8割を占めている。私が、05年に代表取締役に就任以降、この傾向は続いている。個人のニーズに対応するため、7階建ての3階以上の客室階を、フロアごとにテーマを持たせて改装した。商品は、マタニティプランなどさまざまな時代のニーズに合わせたものを販売している。

 ――旅館経営や集客で力を入れている取り組み、その成果は。

 金谷 会社の方向性として(1)ブランディングによる付加価値の向上(2)労働生産性の向上(3)顧客満足度の向上(4)従業員満足度の向上―の四つを合わせながら施策に取り組んでいる。特に付加価値の向上、労働生産性の向上には力を入れており、その中でも中心にあるブランディングに関しては、社員とともにまとめたブランド・プロミスを共有し、おのおのが自発的行動を取れる態勢を整えている。そのことにより、実際の現場では従業員が迷わずに、各ホテルそれぞれのブランドに合ったことを行える。労働生産性を上げることは一見、付加価値の向上と真逆な位置にあるように思われる。しかし、当社では個々の部署でのトレーニングを重ねた上で、他部署を体験する「クロス」、その経験を生かしていろいろな業務ができるようになる「マルチ」、無駄なく効率良く働ける「シフト」の三つを軸にすることで、労働生産性の向上を図っている。単独の部署内だけでの完結では質の良い効率化は進まない。時間帯や稼働状況などを鑑みながら無理のない実施を常に考えている。このほか、従業員のモチベーションを高めるためのキャリアパス、評価制度、参加型のプロジェクトを設けている。現状、平成生まれの若い従業員が全体の約40%を占め、彼らが先輩と共に、楽しみ、そして働く喜びを感じながら仕事ができるように工夫している。また、シフトを管理し他館や他業種などでの研修などを通していろいろな形態の宿泊施設やレストランの勉強、実際の小売販売体験なども実施している。その結果、スムーズな配置転換が可能となり、効率化と売り上げ向上にもつなげている。効率を上げながらお客さまの満足度を上げるために、ブッフェの飲み放題のセルフ化や、オールインクルーシブの導入を行った。作業時間を減らすことにより、質を落とさず満足度を上げる取り組みだ。今後も、お客さまはもちろんのこと従業員の満足度を維持しながら、さらなる効率化を進めていく。

 戸澤 経営管理の観点から業界に参入したこともあり、効率化や利益追求は最初に終わらせた。そこで、旅館業は何かと考えた。時が経過してくると、利益が出ると、施設の老朽化やお客さまの飽きも出てくる。そこは投資を施すが繰り返しだ。これでは前に出られず、結果として、壮大な無駄の垂れ流しになっていると感じている。地域に対しては社員の受け入れもしてきたが、従業員も高齢化してきた。労働生産性が落ちるがそれでもいいと思っている。外国人労働者の受け入れは以前から行い、同賃金を支払っている。シフトは無理がないように注意している。現在、1カ月の中で労働時間は精算しなければならない。19年4月からは、労働基準法が改正され、3カ月のタームで精算すれば大丈夫になる。繁忙期に無理をして、3カ月の中で休みを振り替えることができれば、業界としてはありがたい話だ。力を入れるのは労働の問題。労働生産性の上がらない最たるものが旅館。効率化を求めるホテルとは全く違う。人材がいないことを受け入れるしかないというやり方をしてきた。その部分を、食でカバーしようと地産地消を追求してきた。旅館では、山の奥でマグロを握っている。当時、なんでマグロを握っているのかと言われたが、これは流通を知らない人の言うこと。現在は、世界中の新鮮な食材があっという間にどこにいても届く時代。新鮮なマグロを流通させるのに山の中でも海の側でも変わらない。社員にはできるだけ任せている。強要もしないし、あまり効率も求めない。カメの歩みというか、残すため、成長、経済を持続するためだ。時代に応じて一定の利益水準が得られる経営体質にしている。

 萬谷 「おもてなしは個性だ」「温泉エンターテインメント」の二つのキーワードを掲げている。旅館業はその土地にひも付いた商売をする中で、どんどんハードを改修することは難しいため、人材と時間消費で喜んでもらえるソフトを重視している。将来的には従業員も高齢化が進み、顧客も団塊世代、後期高齢者が大きなマーケットとなる。加賀温泉郷は、北前船の船主たちがお金を散財した楽しい場所という歴史がある。団体旅行が減る中、宴会を楽しんだことがない20~30代の新しい顧客に対し、新しい温泉の楽しみ方を提案していきたい。参加型のイベント実施やフォトスポットの設置のほか、SNSを使った情報発信も強化していく。瑠璃光はまだ団体比率は高いので、団体依存しないような旅館づくりに取り組んでいる。売店や飲料など二次消費につながる商品の強化もしている。また、採用強化として、働き方改革や人事評価制度を採り入れ、若い従業員の採用と定着を目指す。最近、20代の客室係も増えてきている。従来の顧客が減る中、変わるものとしてインバウンドの受け入れを強化している。ツアーの伸びは止まってきたが、FITは少しずつ増えている。海外からは旅館は敷居が高く見え、不便、行きにくいというイメージがあるので、郊外型のインバウンドの受け入れ事例づくりをして発信していく。

 樫本 どういう会社、旅館にしたいかを従業員に説明し、一つずつ具体的にテーマを決めて進めているが、収益をいかに守り持続するかが最終地点。売り上げのアップと経費の削減は大きな課題だ。54室の限りある中で、宿泊単価がポイントとなる。稼働率はここ数年80%前後。1室あたりの利用者数が2.9から3.0ぐらいの中で、どう対応していくかだ。現在、淡路島の食材はブランド化が図られ、たまねぎの知名度は全国的に広がった。新しく売り出している「3年とらふぐ」「淡路牛」などの食材もアレンジし、どのようにすれば感動してもらえるか検討している。また、高級料亭のような上品さと新鮮さを一つのテーマに、食材で単価アップを図る。器とのコンビネーション、和食と洋食のコラボなども研究している。3年ぐらい連続して、前年比400円ぐらい平均単価は上がっている。人員は減少しているが、単価で補っている。経費の削減では、(1)仕入れ(2)人件費(3)水道光熱費―の三つがポイント。経営者、従業員の全員が意識を持つことが大切。仕入れは、5日ごとに原価をチェックするなどし、10年で8%削減した。データを配り、仕入れ担当、調理場、フロント、予約など関係する部署全員で確認している。納品書のチェックも効果的だ。仕入れ担当には、仕入れ業者を特定せずに自由にチャレンジさせている。京セラの稲森和夫氏の言葉に「もう限界だと思ったところからスタートだ」という発言があるように、限界からさらにより良いものをより安くすることを努力するように厳しく見ている。水道光熱費は、各大浴場のシャワー、洗い場、調理場などいろいろなところにメーターを付けて毎日計測している。5日ごとに集計して異変がないかをチェックし、各部署に配っている。また、館内の冷蔵庫や空調機にタイマーを設置し、節電に努めている。人件費は無駄を省くのは難しい。システムを改善してカバーはできる。以前に前洗いなしで済む高級食器洗浄機を導入した。それを機会に、手法を一斉に変えて効率化を図った。導入経費はかかるが、人件費の削減につながるものもある。新たな取り組みとしてバックヤードの無駄を省くために、フロント会計システムにアンドロイドの端末取り入れた。バックヤードを簡素化することに心掛けている。テーマは「ノーペーパー、ノーリマークス」。内線電話での連絡も極力やめ、全てタブレット、アンドロイドで伝わるようにする。内線電話を取る無駄な時間も省き、できるだけ機械化を図った。今後はチェックアウトも連動できるところまでもっていきたい。

 ――自館の将来ビジョン、目指すべき旅館像は。

 金谷 プロジェクト「ビヨンド2020」を立ち上げ、東京五輪・パラリンピック以降について、次世代を担う若手幹部たちと考えている。その中で三つのビジネスを中心に進めていく。一つは、コアビジネスの宿泊事業だ。事業を継続するには人が一番大切。財産である人を育てることを基軸に進めていく。二つ目はネクストコアビジネス。物販事業としてチョコレート事業があるが、他にもオリジナル商品を創造し、販路を拡大していく。三つ目がチャレンジビジネスで、設計チームによる施設デザインやビジネスアイデアの提供や、異業種、富裕層に対応する企業から、おもてなしのノウハウが求められている今、老舗としてのサービスやリノベーションなどの経験を生かしたコンサル事業を展開している。さらには宿泊業のノウハウを生かしたヘルスツーリズムも進めていく。目指す旅館像は、しっかりとしたブランディングを元に、スペックよりストーリー性のある宿にすることだ。宿泊産業は設備産業でもあるが、マーケティングのセグメントに関わらず、「なぜ行く」「なぜ買う」のストーリー性を作ることが求められている。

 戸澤 マネジメントとリーダーシップの違いを明確にし、覚えさせなければならない。今後、働き方改革の中で、相当数の外国人労働者が入ってくる。しっかりとした指導体制が必要になる。言語の不便より、意思の伝達が大事だ。指導者を育て、違いをしっかり教えたい。また、事業承継問題が日本企業全体にテーマとしてあり、どう承継するかを考えている。紫翠亭では、農薬を使わない有機栽培での野菜作りを行っている。市場価格に比べて割高になるが、ブランディングの一つとして取り組んでいる。悠長だという意見もあるかもしれないが、このようなことが許される経営体質、余裕ある経営をしたい。また、JRから提供してもらっている谷川岳の湧き水を冷房に使い、エコに進化した施設としている。また、マーケティングに特化した新しい部署を作る。チーフマネジメントオフィサーを置き、ホームページやSNSを生かした発信などを強化していく。

 萬谷 旅館ビジネスが人口減少の中で岐路に立たされている。答えの一つとしてグローバルなお客さまに支持される旅館づくりが求められている。外国の方や若い方は合理的な考え方を持ち、スマホなどを通じて情報を取捨選択する時代。そういった時代の中で旅館像を模索していく。首都圏やインバウンドなど、新しいマーケットに対し、新しい人材で接客、対応していきたい。地方では旅館業に3Kのイメージがあるが、業界全体のイメージアップ、働きたいと思える場所になる必要がある。23年には、北陸新幹線が敦賀まで延伸する。金沢までの開業の際は加賀温泉郷に多くのお客さまが訪れた。それは、自助努力でなく漁夫の利。次は目的地としての地域の魅力を高めないと選ばれない。情報発信、コンテンツ作りは積極的に取り組んでいく。旅館単体でいうと、コストの問題もあるが、外国の方は時間、場所、食事を自由に選択することが基本にある。素泊まり、1人宿泊など多様な過ごし方ができる態勢を作る。加賀温泉郷は世代によりイメージは違うが、年配の方は、バス旅行や慰安旅行のイメージを持っているが、外国の方や若い方にはそのイメージはない。ブランドを世界的なものとして作り上げるとともに、地域の魅力を高めていく。

 樫本 自館の持つ資源は、立地、環境、建物であり、ほかにも資源があるかを探っている。もちろん既存の資源に対してもまだまだ十分活用できていないが、それを引き出すことで、個性化につながればと考えている。今後、経済成長2%はなかなか困難。大衆の生活レベルではデフレ社会が影響して、不思議と向上している。お客さまに満足いただくためには、その中でより以上の品質を提供しなければ、選ばれなくなる。新しい時代に対して、自館の努力も大切だが、地域全体と連動した取り組みも行わなければならないし、地域の持つ資源も活用していくことが大事。18年1月26日、洲本温泉に新泉源「うるおいの湯」が開湯した。地域の持つ資源が商品化した一つだ。現在、淡路島のお客さまの8割が京阪神からで、関西近郊の観光地として定着してきた。今後は、リピーター化も大切で、島内では空き家を活用した新しい店づくりが、県、市の協力もあり促進されている。また、新しい市場づくりとして今まで認知度が低い地域へのPRも行われている。インバウンド対策など含め、行政と民間が一体となるDMOを観光地の枠組みとして作り、運営していくかもポイントだ。

 ――人手不足に対する人材確保への取り組みは。

 金谷 さまざまな業種での人手不足の影響もあり、大型施設の清掃を外注から内製化した。現在は、稼動率を上げること以上に人材確保に力を入れている。今年は、新卒が30人入った。新卒の採用に一番時間を費やし、働く姿に焦点を合わせたプロモーション動画の作成、進行中のプロジェクトの紹介、内定者の食事会などを行っている。総務の若手が熱意を伝え、私も一人一人面接をしている。会社のコンセプトを分かった上で入社してもらうことが重要。入社後にミスマッチが起こり、退社へとならない魅力的な職場でなければならない。一体感や方向性を共有しながら、会社に魅力を感じてもらうべきだ。その一環として、毎年、経営方針発表会を全館休みにして、全員出席で実施している。毎年行うプロジェクトは主に若手従業員が中心となり進めている。他にも年々、増えてきている外国人従業員のため、寮の用意や、母国にいる家族や友人に連絡しやすいように寮内の無料Wi―Fiの整備をしたり、買い物が楽にできるように電動アシスト付き自転車を貸し出すなど、全ての従業員が働きやすい職場づくりに取り組んでいる。現場に耳を傾けて改善しなければ、従業員の定着は難しいものになる。

 戸澤 外国人労働者の採用を強化している。現在、従業員400人のうち、約1割は外国人労働者が占める。正社員は10人ほどだ。また、近所におもてなし専門学校があり、アルバイトに来てもらっている。移動は、送迎用のマイクロバスを使用しカバーしている。来年は12人に内定を出し、手続きしている。このほか、ベトナムから5人の正社員候補が控えている。清掃は全館自前で実施。全ては計数管理の中で1時間当たりの賃金を算出し、お客さまの人数、稼働に合わせて変動管理している。その中で、フルタイムの人員が増えると労働力は大きく改善できる。寮は徒歩1分のところに4棟を設けるほか、少し離れた場所に家族寮も完備。受け入れ態勢が整わないと選択肢に入らない。一方、今年はうれしいことがあった。地元の高校生が5人就職する。そのうち、日本人スタッフが選ばない清掃部門を4人が希望した。清掃は大切な業務だ。地域の主要な産業としていくらか評価してくれたと感じた。日本人スタッフは年間3、4人来ても半年で2人辞めることもあったが、勤務時間を基準内に収め、休日を取らせ、給与は地域として上昇したことが改善につながっている。今後は、フロント業務の自動化などを進め、人手不足の解消につなげていく。

 萬谷 新卒採用は以前から強化している。来年は16人の新卒が入る。1人は外国籍だ。地域で開催する「加賀温泉郷フェス」という音楽イベントをきっかけに、企画に携わりたいなど応募者が増えている。目標は年20人で、近いぐらい取れるようになった。年間休日数、有給取得率は結構重視されているので、影響がない範囲に収めている。年齢が偏らないように中途採用にも力を入れ、毎週東京、大阪、名古屋で面接している。石川県は求人倍率が高く採用できない地域であり、都市部での面接を地道に取り組んでいる。また、外注の客室係を1年契約で入れ、社員を増やさず、若い人を増やす取り組みもしている。経験上、一番の問題点は中抜け業務にある。午前中と夕方以降が忙しい時間帯だが、できるだけ若い人は外し、対応している。専門職と補助職を設け、社員は高度な仕事に従事し、設営など単純作業はアルバイトが担当している。月1回はシフトミーティングを行い、欠員や仕事がない状態にある人を見つけ、細切れにして仕事を当てている。また、若い社員が辞める際に理由を尋ねると、指導体制の問題が非常に多い。年配社員は、「見て覚えろ」ということがあるなど、人により教え方が違う。今はマニュアルを作成して標準化するほか、評価制度、ステップによる昇級への仕組みなど作り対応している。今後は、定着率を上げていきたい。

 樫本 一時の正社員が入らない時代を反省し、面接から内定を出すまでに何回も顔合わせをしている。食事会を行うなど、経営者の顔を見せている。経営者として何を考え、会社をどうしていくかなど、熱意、思いを少しでも理解してもらえるように努力している。今は、入社後に1~2年は定着するようになった。入社後は放置せず、上司や仲間とのコミュニケーションを促し、月1回はカウンセリングを行い対処している。福利厚生では、他ではできない条件を考え、会員制のプール付きのマンションを寮として利用したり、勤務後に食堂で音楽や飲み物でコミュニケーションが取れるバーコーナーを設けたりしている。外国人は、中国などからインターンシップを受け入れている。中国からは、来た子が後輩を連れてきてくれる流れが出来上がった。今、一番の課題はパートが集まらないこと。まだまだ働ける人たちが介護の壁にぶつかっている。賃金が高い、安いの問題もあるが、それだけではない地域の重要な問題だ。

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