【教育旅行レポート】筑波大学付属坂戸高等学校 長野県飯田市など4方面 21年7月14日~17日


6次産業化に取り組む農家で聞き取り調査(飯田市)

社会課題が発生する現場へ 農業の6次産業化などテーマ

 埼玉県坂戸市に校舎を置く筑波大学附属坂戸高等学校(江前敏晴校長)は、筑波大学の付属校として、グローバル教育に力を入れる。総合学科の学校で、生徒は四つの科目群、「生物資源・環境科学」「工学システム・情報科学」「生活・人間科学」「人文社会・コミュニケーション」の中から一つを選択し、2年生と3年生の時間割を自分で作らなければならない。

 文部科学省が高校生へ高度な学びを提供する仕組みづくりを目指す、「WWL(ワールド・ワイド・ラーニング)コンソーシアム構築支援事業」の拠点校でもある。その研究開発のミッションは「国際フィールドワークを通じて持続可能な国際社会を創る人材育成システムの構築」。ミッション遂行に向けて、1年次に国内と海外の校外学習でフィールドワーク、2年次に一般の高校の「総合的な学習の時間」に当たる「T―GAP」(つくさかグローバルアクションプログラム)でのグループ活動、3年次に卒業研究を行っている。

 しかし、2020年度はコロナ禍で国内、海外とも校外学習が中止。その海外校外学習の代替措置として21年7月、2年次に長野県など国内4方面で校外学習を実施することとなった。

 2年次での国内校外学習は、海外校外学習で目指していた(1)社会課題が発生する現場を訪問する(2)課題解決に向けて行動している団体、行政機関、企業、農家、NPOなどを訪問する(3)課題解決のためにアクションする―の三つを目的として設定。2年生150人が全員で行動すると「3密」状態になるため、山梨県笛吹市、長野県飯田市、静岡県掛川市、長崎県西海市の4方面に分けた。行く方面は生徒に選ばせた。

 実施期間は21年7月14~17日の3泊4日。長崎方面のみ16日まで。

 笛吹市でのテーマは「笛吹市の魅力を発掘し、新たな学校旅行を提案する」。国内校外学習を担当した吉田賢一教諭は「笛吹市は校外学習や修学旅行の受け入れ件数が少なかった。そこで生徒が笛吹市中に広がってフィールドワークを行い、修学旅行のプランを笛吹市役所に提案した」と活動内容を説明する。

 掛川市では「お茶を活用したビジネスモデルの提案と地域活性化」、西海市では「地域資源の発掘、民泊を活用した地域創生」をテーマに社会課題の解決に取り組んだ。

 「ポストコロナの観光のあり方と農業の6次産業化」をテーマとした飯田市校外学習には生徒67人が参加した。初日は、学校に集合し、バスでの移動で現地入り。飯田市内を観光ガイドの案内で散策した後、飯田市公民館で市の職員から「飯田市の産業施策と地域課題」について聞いた。

 2日目は、「地域産業コース」と「農業コース」の二つに分かれて行動。地域産業コースは、天竜峡に行き、地域資源を活用した観光スタイルについて考察。「名勝・天竜峡の再生」や「日本初の河川架橋下の歩廊や遊歩道の生かし方」を探り、「ウィズコロナ時代の新しい観光の在り方について考えた」(吉田教諭)。その後、国の登録有形文化財に指定されている木造校舎の「杵原学校」に場所を移し、飯田の伝統工芸「水引」について職人からレクチャーを受け、水引工芸を体験した。

 農業コースは、「やすます中島農園」で農業法人事業の現場を体験。黒豚を飼ってソーセージを作り、その堆肥で果物を育てる循環型の有畜複合農業を目指す「さんさんファーム」では、その取り組みを学んだ。

 引率した学年主任の中井毅教諭は、「6次産業化に挑戦している人は非常にこだわりを持っている。例えば、ソーセージを作るにしても天然素材にこだわり、それを強みにブランド化していこうとしている。そういうことを生徒に熱意を持って語ってくれたので、生徒の方も『熱い思いでやっているのだな』と感ずることがあったのではないか」と当時の現場を語る。

 3日目は、外国人コミュニティのリーダーによる講義や、「満蒙開拓平和祈念館」での講義を通じて国際化や平和について学ぶ。4日目、学校に帰着した。

 今回の国内校外学習全体について、中井教諭はこう総括する。「この学年の生徒たちは、入学式をはじめ大きな行事はこれまで何もできなかった。そういう学年だったので、緊急事態宣言の合間を縫って、よく行けたな、行けて良かったというのが正直な感想だ」。

 吉田教諭は「コロナ禍の中でなぜ実施できたのかというと、自治体や、自治体とつながっている一般社団法人の方、農家の方が受け入れてくれたからだ。受け入れ先の皆さんのご協力が本当に大きかった」と語った。


6次産業化に取り組む農家で聞き取り調査(飯田市)

 

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