【座談会】長野・群馬 広域周遊観光ルートづくり座談会

  • 2021年11月2日

長野県観光部長、長野県須坂市長、大阪観光局理事長らによる座談会

広域周遊観光ルートで新たな旅を提案

 共通テーマやストーリー性をもたせ、何日も滞在し、広域周遊を促す観光、いわゆる「広域周遊観光ルート」は、域内観光消費を喚起する効果が期待される。長野、群馬両県で広域周遊観光ルートづくりに取り組む関係者に集まっていただき、広域周遊観光の在り方を語ってもらった。(9月下旬、長野・湯田中温泉の「一茶のこみち美湯の宿」で)

 

 ――新型コロナウイルスは観光業に大きなダメージを与えているが、長野県内の状況は。

 渡辺 コロナ禍の前の2019年の年間延べ宿泊者数は約1800万人だったが、20年は約4割減少し、約1100万人となってしまった。観光消費額も約8700億円だったが、約7千億円まで落ち込んだ。

 長野県は首都圏や関西圏など大都市圏から来る旅行者が大きな割合を占めている。緊急事態宣言で移動が制限され、県内の観光事業者は大変厳しい状況に置かれている。県ではこれまで、感染が拡大している時期には「前売割」や「延期割」といった仕組みで将来需要の確保を図ると共に、いわゆる県民割も感染リスクを抑え継続してきた。

長野県観光部長 渡辺高秀氏

 

 三木 宿泊業を中心に客足はかなり落ちている。ただ、宿泊が原因で感染が拡大しているわけではない。宿泊施設などの予防対策はしっかりしており、われわれを含め政府は正しい情報を発信する必要がある。

 コロナ禍をきっかけに、どういう客層をターゲットにするか、ウィズコロナにどう対応すべきかなど、事業者も考えるようになっており、その意味では収束後の事業展開に期待がもてるのではないか。

長野県須坂市長 三木正夫氏

 

 斉須 湯田中渋温泉郷で旅館、志賀高原でスキー場・横手山スキー場(長野県)、渋峠スキー場(群馬県)を持ち、年間を通じてリゾート経営をしているが、宿泊業はかなり厳しい。これ以上こんな状態が続いたらどうしたらいいのかという状況だ。

 一方、スキー場は屋外スポーツでもあり、密にはならない。サマーシーズンはスカイレーターとリフトを使って山頂(2307メートル)まで行けることもあってお客さまが足を運び、減少幅は小さかった。

S&T観光開発社長(一茶のこみち美湯の宿) 斉須正男氏

 

 山本 インバウンドの順調な増加もあって19年までは良かったが、20年は5~6割のダウンとなった。20年は「Go Toトラベル」でそれなりに動き、休館を余儀なくされたこともあったが、それでも今よりはましだ。

 群馬県の早期の観光業支援策に期待すると共に、政府には新たなGo Toトラベルを年明けからでも進めてもらいたい。今はキャッシュアウトの月をどれだけ減らすかを心掛けている。先は見えていないというのが実情だ。

ホテルニュー高松社長 山本剛史氏

 

 溝畑 30年までに大阪をアジアナンバーワンの国際観光文化都市にするという長期ビジョンを掲げ、21年を助走、22~24年をホップ、25~27年をステップ、28~30年をジャンプ期間と位置付け、施策を展開している。コロナ禍の影響は深刻だが、観光復興に向け、21年度は観光事業者の経営維持支援や反転攻勢の準備などを行い、マイクロツーリズムの普及、サイクリングやグランピングといった密にならない観光の促進などに取り組む。

 ニューノーマル(新常態)で価値観も変化し、新しいコンテンツが必要。その意味では魅力的な観光コンテンツがそろう長野、群馬は大きなチャンスを秘めているのではないか。

大阪観光局理事長 溝畑宏様

 

 ――溝畑さんから魅力的なコンテンツがあると絶賛されたが、県の観光魅力を改めてうかがいたい。

 渡辺 山岳、温泉、食文化、スキーなど挙げればきりがない(笑い)。広域周遊観光ではそれらを線で結び、また、面として、旅行者を引きつけるプラン造成が鍵になる。22年は「善光寺御開帳」や「諏訪大社御柱祭」など大型催事が開催される。感染対策などをしっかり講じた上で、県内を周遊いただけるよう準備を進めている。こうした催事などを契機に、22年を信州観光復活の年としたい。

 三木 さくら名所100選の「臥竜公園」や上信越高原国立公園にある「峰の原高原」、国指定名勝の「米子大瀑布」などの豊かな自然に加え、ぶどう、りんご、桃などとこれを使ったフルーツスイーツの町であり、歴史的なまち並み、温泉もある。みそや日本酒・ワインなどの発酵食品も豊富。魅力がありすぎて絞れないのが悩みの種だ(笑い)。

 

 ――広域周遊観光を考える時、日本風景街道、いわゆるシーニック・バイウェイが一つのモデルコースになるのでは。

 斉須 このエリアでは、「浅間・白根・志賀さわやか街道」がある。これは長野県の軽井沢町を玄関口として、群馬県の嬬恋村、長野原町、草津町、中之条町を経由し、長野県の山ノ内町に至る全長200キロのルート。沿道の景色は素晴らしく、特に草津町から山ノ内町に至る国道292号(志賀草津高原ルート)は絶景で、国道では日本一の標高となる2173メートルの地点を通過するのも魅力的だ。

 この街道は山ノ内町で止まっているが、広域周遊観光の観点からは、須坂、そして長野まで視野に入れることも考えてみてもいい。各地に魅力的な観光資源があり、関係者が手を組んでモデルコースを作れば、周遊滞在型観光として訴求力はあると思う。

 山本 県は関係ない。私の中では白根山も、志賀高原も、草津も万座も山ノ内も皆一緒(笑い)。県をまたぐといろいろ問題も出てくるが、協力し合って、このエリアならではの観光の楽しみ方を提供すべきだ。

 溝畑 イメージはドイツのメルヘン街道(全長600キロ)。草津と志賀高原、軽井沢を含めたルートはこれに匹敵し、世界的に見てもとても魅力的なルートになる。また、草津と志賀高原をゴンドラで結べれば最高だ(笑い)。ゴンドラは環境にやさしく、CO2を出さない。天空を旅して温泉につかり、おいしいものを食べる。自然の懐に抱かれ、SDGsにも貢献する。テーマ、ストーリー、ネーミングにこだわり、このエリアならではの広域周遊観光ルートを作っていただきたい。

 渡辺 広域周遊観光を形作る上で広域DMOの存在も欠かせないと思う。長野県では重点支援広域型DMOとしてハクババレーエリアを支援している。キャッシュレスやWi―Fiの整備、感染対策の統一ルール策定など、エリア内をストレスなく、安全安心に旅行いただける環境づくりも大切。

 三木 広域的に企画立案し、それを実行する人、機関がなかなかいない。

 

 ――広域周遊観光は広範囲に及び、足(2次交通)をどう確保するかという問題もある。高齢化が進み、免許の自主返納の動きも加速しそうだ。車を持たない人にとってはなかなか旅行に行きにくい。

 斉須 そうした問題を解消するため、特定バス(特定旅客自動車運送事業)の申請を検討している。特定の顧客の需要に応じ、一定範囲の人を決まった場所まで運ぶ運送事業で、企業や学校の通勤・通学用バス、施設の送迎バスなどが該当する。車両も1台からスタートでき、比較的参入しやすい。運輸局にも打診済みで、いい感触を得ている。運行ルートをどうするかという問題はあるが、草津温泉のお客さまを湯田中や志賀高原、そして須坂にも送迎できるようになれば、町の活性化にもつながるのではないか。来年には事業を開始したい。

 山本 非常にありがたい。昔は草津と軽井沢を結ぶ草軽鉄道があったが、それに匹敵する夢のような話だ。ゴンドラも実現すれば旅の仕方も変わってくる。

 溝畑 旅行に行きたくても行けない人は相当数ある。そうした人がストレスなく旅行に行ける環境づくりはとても大事だ。行政は2次交通に対する財政支援を真剣に考えるべきだろう。

 

 ――「上信越ふるさと街道協議会」という組織がある。群馬、長野、新潟の20市町村で構成されているが皆さんご存じだろうか。各地の観光資源を網羅し、周遊モデルコースも掲載されているのだが。残念ながらあまり知られていないようだ。

 三木 「美しい自然、伝統、歴史、そしてそこに暮らす人々の夢と生活を結んだ一本の街道」という触れ込みだ。魅力的なコースであるので、踏み込んだ具体的な活動が必要と感じている。

 溝畑 「ふるさと」という名称は全国どこでもあるだけに、あまり記憶に残らないネーミングだ(笑い)。コンテンツはいいだけにもったいない。

 山本 どう発信していくかも大事だ。草津も地域DMOをやっているが、SNSの発信力は侮れない。お金を出し合って動画を作り、世界に発信することも考えてみてもいい。

 三木 短期的に損してもいいからやる。「うちは観光客が少ないからお金を出すのも少しでいい」と考えるのは間違い。観光してもらって「ここはいい町だ」と思ってもらえると市民の自信と誇りにつながる。そうなればもっといい町にしようという意欲も出てくる。

 溝畑 観光庁長官をやっていた時に思ったのは「観光業は狭いところで議論しているな」ということ。目をもっと外に向けてもいい。観光は地域の総合戦略的産業であるということを意識してほしい。

 

 ――広域周遊観光の確立は、エリア経済、観光業の今後を考える上で極めて重要だと思う。皆さんがリードし、ぜひ実現してほしい

 渡辺 サステナブルツーリズムの観点からも進めなければならない。一過性に終わらせないためには、自然や歴史・文化など信州が誇る豊富な観光資源を生かしたテーマやストーリーの設定、観光地間の連携が不可欠と考える。県としても確立に向け支援していく考えだ。

 三木 自分の地域の利益のみではなく、広く他地域の利益、「自利利他」の精神で考えることも必要だ。お客さまの喜びが自分の喜びという視点で取り組む。市としても協力を惜しまない。

 斉須 観光地間競争が激しくなる中、広域周遊観光は差別化の武器ともなる。縄張り意識を捨て、目的に向かって一丸となって進めていきたい。

 山本 さまざまな観光資源を線で結ぶことで新たな魅力が出てくる。草津と湯田中温泉、志賀高原、須坂、そして軽井沢が一体となることが肝心だ。

 溝畑 目標を高く置いて、ワンチームで作り上げてもらいたい。長野、群馬はSDGsで世界の聖地になる。

 

左から、山本、斉須、渡辺、三木、溝畑の各氏

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志賀高原の横手山・渋峠スキー場頂上(2307メートル)にある「2307満天ビューテラス」は大パノラマが一望できる

長野・諏訪大社の最大行事「御柱祭」

魅力ある観光地が点在する須坂市

群馬県を代表する名湯「草津温泉」

 
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