【岐路 バスと観光 新たな関係66】高速バスと観光4 成定竜一


 クルマ旅行が旅行者個人の興味関心に基づき多様化が進んでいるならば、クルマを使わない旅行者の場合はどうだろう。

 まず、予測された通りダイナミック・パッケージ(DP)のサービスは開始され、一定のシェアは得た。航空運賃自由化や高速バス規制緩和により、運輸事業者の公式サイトなどで座席を個人で予約する場合の価格も柔軟になったので、往復の足と現地の宿泊などをバラバラにウェブなどで個人手配する旅行者も、ある程度は増えたことだろう。

 だが、もともと旅好きの人の場合や、シンプルな旅程(テーマパークへの単純往復など)の場合を別にして、広域を周遊する旅行者は、旅行会社のカウンターで相談することが依然として多いのではないだろうか。そして、カウンターではよほど特別なリクエストをしない限り、パッケージ旅行の販売が中心となる。

 もちろん、自由行動の多い個人型パッケージの比率は上昇している。だが、DP同様、広域を周遊する旅には適用しづらい。モデルコースを示したり、オプションとして着地型ツアーなどをセットで販売したりすることもあるが、旅行者一人一人の興味関心に基づき「分化」し、「深化」した旅行目的を実現する細やかさまでは持ちえない。

 つまり、(統計があるわけではないが)クルマ以外の移動手段で、かつ滞在型ではなく周遊型の旅行を望む場合、依然としてパッケージ旅行への依存度が大きいと考えられる。

 社会が豊かになり、またテレビの多チャンネル化やウェブの普及により流通する情報量が増加する中で、旅行者が習熟し、名所旧跡を回る「確認型旅行」では満足しなくなるし、余暇の過ごし方も多様化し旅行以外のレジャーが増加した今、一人一人の興味関心に基づいた旅行を実現しなければ「旅に出る理由」がなくなってしまう、という危機感は業界の中では定着しているはずだ。

 何とか変革の歯車を回し始めたい。そのための課題を来週以降、具体的に考えていきたい。

 (高速バスマーケティング研究所代表)

 
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