ここまで、高速バス市場の「本丸」である、「地方の人の都市への足」市場(第一の市場)と、規制緩和後に急成長した「大都市どうしを結ぶ市場」(第二の市場)について、今後に必要な戦い方を見てきた。
「第一の市場」では沿線人口の減少が明白である中で、現在の顧客基盤においていかに収益性を向上させるかが鍵になる。
特に、競合する鉄道が、同様の理由によりレベニュー・マネジメント概念に基づく積極的な運賃変動を導入する可能性があり、それに対応するためにも、需要によってきめ細かく運賃を変動させるスキームを早期に開発しなければならない。
「第二の市場」では乗客がウェブ上で比較検討しながら予約するため、価格競争に陥りがちである。それゆえ、明確なブランドを打ち立てると共に会員プログラムを充実させるなどしてリピーターを囲い込み、価格だけをキーにした競争から脱することが必要だ。
いずれの市場でも、収益性を確保し、その収益をサービス改善(安全性のさらなる向上を含む)に再投資するサイクルを構築できなければ、乗客逸走とサービス低下という負のスパイラルに陥ってしまう。
一方、既に「地方→大都市」「大都市→←大都市」の市場を高速バスが握っているなら、次に成長を狙えるのは「大都市→全国津々浦々」である。
バスと言えば観光というイメージを持つ人も多いであろうが、現実には、それは貸切バスの領域であって、現在の高速バス市場における観光客の比率は驚くほど小さい。逆に言えば、この分野を掘り起こすことができれば、高速バス市場はもう一段階、拡大することになる。
高速バスにおける観光需要を喚起するには、高速バス業界のみならず、広くツーリズム産業全体での環境変化を理解しなければならない。次週から、団体から個人へとシフトが進む内外の旅行者と、高速バスの関係について考えていく。
(高速バスマーケティング研究所代表)