【岐路 バスと観光 新たな関係60】高速バス市場のこれから13 成定竜一


 2017年に入って「第二の市場」の代表格である首都圏―京阪神に、「完全個室」などをうたう超豪華車両が相次いで投入され、新聞やテレビで話題となった。

 この動き自体は、乗客がウェブ上で比較検討の上で高速バスを予約する「第二の市場」において、商品を多様化(豪華、格安、女性向け、アメニティグッズ付きなど)させることで、空席検索結果画面で埋もれてしまわぬよう各社が工夫を続けた流れの延長線上にある。

 だが、バス事業者にはもう一つの目的がある。これらの車両がメディア露出を繰り返すことで、自社の企業ブランドの認知を進めることである。

 前述のように、これらの路線では乗客は予約サイトにひも付いてしまっている。帰省客のように同一区間を繰り返し利用する乗客も、その都度、商品性や価格を比較して予約する。当然、価格引き下げの圧力も大きい。車両設備や接客で好感を持ってもらっても、バス事業者名自体が十分に認知されなければ、リピート利用にもつながらない。

 そこで、まずは事業者名(社名または企業ブランド名)を覚えてもらうことが重要になる。そのためには、空席検索結果に表示される「プル」だけでは不十分で、テレビやウェブニュースなどで露出するなどし、積極的に記憶してもらう「プッシュ」の戦略が必要になる。

 それに加えて、実は重要なのが車両のカラーリングである。乗客はサービスエリアなどでの休憩の際に、多数並ぶバスの中から、バスの塗色を目当てに自分のバスに戻る。従って、バスの塗色を必ず記憶する。WILLER EXPRESSのピンク色は、女性を重視するというメッセージ性との相乗効果も大きく、「ピンクのバス」と検索し同社のサイトを訪問する乗客も多いという。

 最近では、神姫観光バスが高速バスのブランドを、レモンをもじった「LIMON BUS」に変更した上、車両の塗色だけでなく内装(座席の生地)まで、明るいレモンイエローにそろえた。

 「まずは覚えてもらう」ことが重要なのである。

 (高速バスマーケティング研究所代表)

 
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