
高度経済成長期には、地方都市で、地元バス事業者自らが商業施設を開発し、その一角にバスターミナルを設置する例が目立った。
新潟交通らによる「万代シティバスセンター」、庄内交通による「庄交モール」(鶴岡市)、宮崎交通による「宮交シティバスセンター」など全国に相当数見ることができる。旧来の繁華街または鉄道駅前(いずれにしても、いわゆる中心市街地)に立地し、GMS(ダイエーやイトーヨーカドーなど)がキーテナントであるとともに、自家用車駐車場も備える。
逆に、百貨店などの商業施設の側が、大手私鉄のターミナル駅併設の百貨店(いわゆるターミナルデパート)に倣ってバスターミナルを自ら設置したり誘致したりした例もある。天満屋バスセンター(岡山)、広島バスセンター(百貨店「そごう」に併設)、山形屋バスセンター(鹿児島)などがそうだ。
いずれも、地方部において、乗合バス事業者は「地元の名士企業」であり、交通の主役がバス、商業の主役が中心市街地だった時代の話である。
余談だが、新潟や熊本、宮崎などで、バスターミナルに巨大なボーリング場が併設されていた点は、その象徴と言える。
国が「コンパクトシティ」政策を進める中で、このような「都市の核」としてのバスターミナルは、地域公共交通ネットワークの拠点として再び注目を集めるかもしれない。
だが、高速バスの分野においては、クルマ社会化が進む地方部でパーク&ライドのニーズは高まる一方である。高速道路のインターチェンジ付近などに広大な駐車場を設置し、そこに高速バスの停留所を併設するのである。その場合、普通は、「バスターミナル」と呼ばれる規模にはならないが、「木更津金田バスターミナル」(千葉県)などは立派な規模である。
東日本大震災以降、鉄道が寸断された福島県南相馬市では、仙台などと結ぶ高速バスと、地域内の交通機関(地元の人にとっては自家用車。外来客にはタクシーなど)との乗り換え拠点として、高速道路のインターチェンジ前にバスターミナル整備が進んでいる。
(高速バスマーケティング研究所代表)