【岐路 バスと観光 新たな関係 79】高速バスと観光17 成定竜一

  • 2018年2月13日

 「個人旅行者(邦人もFITも含めて)が公共交通を乗り継いで、最小限のストレスで旅行できる環境」を作り上げることは、簡単なことではない。宅配便事業者と提携し手荷物託送サービスを開始するにせよ、「高速バスとバスツアーの中間」型の商品を開発するにせよ、主要ホテルでのピックアップ・サービスを提供するにせよ、実はリスクは大きい。

 その理由は、「毎日、安定して提供しなければならない」という点にある。特定日のみ設定し、高い乗車率で催行するバスツアーとの根本的な違いである。

 従って、いきなり全国津々浦々までこれらの施策を行うことを求めるのは難しいだろう。まずは観光客、特に、手荷物の大きさや言葉の問題など旅行中のストレスが大きく、一方で周遊ルートが集中しがちなFIT向けに、「観光回廊(コリドー)」を整備することが重要である。

 わが国で最も成功したコリドーは、「昇竜道(中部国際空港~名古屋~高山~白川郷~金沢・富山)」であるが、行程のほとんどは高速バスを使い、それらを乗り継ぐための企画乗車券「昇竜道高速バスきっぷ」が好評である。

 この企画乗車券で乗り継げるルートは、ほぼ、従来から運行されていた高速バス路線をつなげたものにすぎない。2012年という早い時期から、中部運輸局が主体となってインバウンド集客のプロジェクトが積極的に進められたことに加え、口コミで評価が高まり、一気に人気の観光回廊が成立した。

 バス事業者や宿泊施設らから見れば、「突然、外国人客の比率が高まり、対処療法を重ねているうちに、気が付けばFITを受け入れる環境が整っていた」というのが本音だろう。

 もっとも、FITへの社会の、特に自治体の関心が高まっている今では、行政主導によるコリドー作りではどうしても総花的になってしまう。交通事業者を中心に、民間ベースで、お隣の観光地をつなぐ作業を重ねていくしか方法はないだろう。

(高速バスマーケティング研究所代表)

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