
旅行流通の在り方が変われば、必ずしも高速バス既存路線が観光施設や宿泊施設に立ち寄るという小さな変化のみならず、行程の途中で立ち寄り観光を行うような「高速バス(移動)とバスツアー(観光)のハイブリッド」型商品も考えられる(そういえば、1980年代まで、JTB「エースバス紀行」という商品群があった)。
重要な点は、片道のみの乗車を認めることだ。宿泊施設や前後の行程を旅行者自身が選択できることが、今後の旅行の在り方を考えると必須だといえよう。
もっとも、特定の日しか催行しないが、その日については高乗車率を求められる(その結果として、低単価も実現する)従来型のパッケージツアー(バスツアー)と、毎日安定して運行することが求められる高速バスでは、価格設定など多くの面で乖離(かいり)がある。
個性的で多様なコースを、かつ、安定して毎日提供するという命題は、お互いに反するものだ。ビジネスモデル(お金のもらい方、回し方)の面でブレイクスルーが必要で、この部分が筆者の次の挑戦になると認識している。
空港や拠点駅から観光地への足に加え、現地(観光地)同士を横に串刺しする2次交通も、ますます重要度が増す。
日帰り、または1泊が中心の国内旅行市場が重要だったころは、隣の観光地同士は競合関係だったかもしれないが、FITを想定した場合、「観光回廊(コリドー)」の整備は重要で、お隣同士は一緒にマーケティングを行う仲間という位置づけに代わる。
例えば、御殿場のアウトレットモールは、東名高速沿いに立地するうえ、箱根と富士五湖の中間に位置し、間もなく敷地内にホテルが開業する。観光の「ハブ」として二大観光地の緩衝材の役割を果たすことで、広域のリゾート、観光エリアを創出することができるとみている。
県境を超えると乗合バス事業者も異なるが、バス事業者同士もまた、一緒にマーケティングを行う仲間だと意識を変えていかねばならない。
(高速バスマーケティング研究所代表)