貸し切りバスの規制緩和(2000年)以降に、貸し切りバスの市場(輸送人員)が3割も増えた理由は何か。一つには、業界全体で車両数が増加したため、これまでバスが足りなかった繁忙日に、申し込みを断ることなく受注できるようになった点だ。だが、新しいニーズを生んだことも間違いない。
まずは、都市間輸送を募集型企画旅行として実施し、貸し切りバスをチャーターして運行する「高速ツアーバス」。問題も指摘され、制度上は既に貸し切りバスから乗合バスに移行した。貸し切りバス事業者の中には、BtoC事業への進出を渇望しつつもさまざまな参入障壁があってかなわなかった者も多く、一部はこのチャンスをものにして高速バス事業者として成功した。
次が、社員や学生生徒らの送迎バス事業だ。企業や学校が自ら運転手らを雇用するよりも、貸し切りバスの通年契約とした方が、トータルで見るとコストが下がるケースが増えたのである。この分野は、企業らが事故などのリスクをより考慮するようになったこともあり、引き続き安定した需要がある。
問題は残る二つのニーズだ。
法人需要や教育旅行市場が縮小する中、一部の旅行会社は個人向けの「メディア販売」に注力した。その目玉の一つが「格安バスツアー」であった。前述の通り貸し切りバス運賃(チャーター代)は下落しており、ツアー販売のコスト構造見直しもあって、驚くような低価格のツアーが生まれた。
また、インバウンドツアーの市場も生まれた。当初、台湾などからツアーを迎えるランドオペレーターが提示する貸し切りバス運賃額は極めて低く、運行の内容にも無理が多いことから、新規参入の零細貸し切りバス事業者の独壇場となった。一時は、「爆買いツアー」のバスで銀座の中央通りが埋まるほどであった。
しかし、どちらの市場も、転機を迎えている。
(高速バスマーケティング研究所代表)