この「プッシュ施策」。すなわち、もともとバス乗務員という職業に興味がある人を取り込むという「プル施策」ではなく、新たにバス乗務員を自らの仕事の候補だと認識してもらうという取り組みを、求人サイト「バスドライバーnavi(どらなび)」の二つ目のミッションとして掲げた。
わが国の路線バスの年間輸送人員は、ピーク時(昭和40年代)の100億人レベルから現在では約40億人にまで減少している。これは、バス乗務員という仕事に、乗客などの立場で日常的に接する人が減っていることを意味する。その結果、自らの将来の姿としてバス乗務員を想起する人(特に子ども)の数は減る。
まずは、子どもや学生らが将来の自らの職業を想像する際に、あるいは社会人が転職を検討する際に、バス乗務員という職業を想起してもらうことが第一歩である。
ただ、重要なミッションだとは言っても、成果(現実の就職、転職)に至るまでには長い時間が必要で、また効果測定も困難である。そういう場合、いわゆるパブリシティ(マスメディアにおいて、広告費を払う宣伝としてではなく、ニュースや話題として紹介してもらうこと)が取り組みの中心となる。
同サイトでは、事業を開始した際やその後のイベントの機会などにおいて、積極的にメディア露出を図ってきた。
乗務員志望者を集め、タイプが異なる複数のバス事業者の営業所を訪問する「職場見学ツアー」や、現役の女性乗務員および乗務員志望の女性たちを集めてのトークショーや交流会といったイベントは、その参加者(乗務員志望者)自身がバス乗務員という仕事を深く知る機会を提供するとともに、「カメラ受け」することから数多くの全国紙やテレビ番組などでご紹介いただいていた。
このように断続的にメディア露出を重ねることが、「プッシュ施策」の中では特に重要な取り組みであると考えている。
(高速バスマーケティング研究所代表)