【岐路 バスと観光 新たな視点 110】どう解決 乗務員不足7 高速バスマーケティング研究所 成定竜一


 従って、バス乗務員不足の解消に向け、「女性」と「若年層」への期待は大きい。

 現在、全国で12.5万人いるバス乗務員(事業用のバス)のうち、女性の比率は1.5%に過ぎない。参考までに、自衛官の女性比率、約6%という数字と比べると、バス乗務員という職種でどれほど女性活用が遅れているかを実感できる。

 女性比率が小さい理由は、おおむね二つある。

 一つ目の理由が、以前において、バス乗務員という職種が「力仕事」であったという点だ。例えばバスにパワーステアリングが装備される前は、ステアリング(ハンドル)の直径は大きくて小柄な人だと身を乗り出して回していたし、操作自体も重かった。車両の故障が多く、そのたびに乗務員自らが部品の交換を行うようなこともあった。

 現在では、ほぼ全ての新型車両が自動変速(乗用車のATとほぼ同様)となっているし、雪の多い地区では最初からスタッドレスタイヤに履き替えるのでチェーンを巻く作業なども減っている。楽な仕事という気はないが、以前の「力仕事」とは様相が異なる。

 問題は二つ目の理由だ。それは、仕事の性格が変わり男女を問わない職種に変わったにも関わらず、女性乗務員を受け入れる態勢が整わない事業者が多いことだ。

 女性乗務員が所属していないので、そもそも女性用のユニホームが用意されていない(事務員やバスガイド用の制服はある)。乗務員向けの休憩室や仮眠施設なども、女性乗務員のことを想定されておらず、男女のエリアが分かれていない。

 新たに女性乗務員を採用しようとすると、その数人のために手間やコストが必要で採用に二の足を踏んでしまう、というのが多くの事業者に共通の課題だ。

 逆に言うと、一部の事業者を除くと手つかずの領域であるので、今後、女性が働きやすい環境を整え、勤務形態も多様化させ、かつ採用活動も積極的に行うことで女性比率が上がれば「純増」である。全体の乗務員不足の解消に結びつくことへの期待は大きい。

 (高速バスマーケティング研究所代表)

 
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