【岐路 バスと観光新たな関係32】高速ツアーバス誕生から終焉まで2 成定竜一


 いわゆる「スキーバス」商品を得意とする旅行会社らは、スキー人口減少により、生き残りをかけてテーマパークへの直行バスに進出した。

 特に、東京ディズニーリゾート(TDR)を起点とし、新宿など東京都心でも乗車扱いをした後、夜間走行して西へ向かい、京都や大阪市内に降車扱い後、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)を終点とする運行ルートを設定しバスを毎日往復運行させれば、首都圏からUSJへ、関西からTDRへという2方面の旅行者を混乗させることができ、極めて効率的だった。

 オリオンツアーが同商品を催行開始した数カ月後には、同じくスキーバスを得意としていた西日本ツアーズ(現ウィラートラベル)ら数社もそれを追いかけた。

 夜行バスで往復する夜行日帰り(0泊3日)に加え、ホテルで宿泊するコースも設定されたが、テーマパーク周辺ホテルは人気が高く部屋を確保しづらいため、新宿や梅田などの大型ホテルを使うことも多かった。東京や京都の街を観光するのにも都合がいい。その結果、バスの乗車区間が新宿―梅田というふうに両都心間のみ、というケースも発生する。

 そこで、旅行会社がテーマパーク直行ツアーの派生形として、新宿―梅田といった移動のみの商品を設定したところ人気が集まった。

 首都圏―京阪神間には、以前から高速バスが運行されてはいた。だが、従来のバス事業者のプロモーション手法は地方部において有効だったが、大都市部では高速バスの存在感は小さかったため、首都圏―京阪神のように両端が大都市の路線では潜在需要を大きく残していた。

 割安で移動できる夜行高速バスを希望する人は相当数いたのに、彼らは既存の高速バスの存在や予約方法を知らず、旅行会社の新商品に飛びついたのだ。

 商品内容は移動のみで、宿泊やテーマパーク入場券はつかないが、旅行会社の商品なので立て付け上は「主催(募集型企画)旅行」である。もっとも、大都市―スキー場のスキーバスで同様の商品は既にあり、その発想を応用しただけのことである。

 (高速バスマーケティング研究所代表)

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