
本原稿を書いているのは県をまたいでの移動ができるようになった6月19日。前日には東京の感染者が40人を上回ったこともあり、まだ積極的に遠出の旅行はできない状況では、近場や地元の観光を楽しむ「マイクロツーリズム」を推進していく必要があります。
ふるさとの新潟県は1泊1万円以上の宿泊代金から最大で1人5千円が割り引かれる「つなぐ、にいがた。」が7月末日まで利用できますし、他にも北海道、大阪、群馬、栃木などは地方自治体の支援があるようです。暮らす土地を旅してみるという傾向はまだ続きそうです。
コロナ禍により、訪日外国人観光客誘致や受け入れが難しい時期ではありますが、観光庁から任命していただいたわれわれVJ大使はそれぞれの場所で少し目先を変えて活動しています。6月18日には、ホテル風月HAMMOND社長の甲斐賢一大使、関西国際大学教授の李容淑大使が取りまとめてくださり、総勢12人ものVJ大使によるZoom意見交換会が行われました。
東京・谷中の旅館澤の屋のご当主・澤功大使が「来年3月に海外からのお客さまの予約が入りました」と口火を切ると、オンライン上で歓声が上がりました。「ずっと90%減が続いていますが、今は地域の人が『澤さんが大変なら泊まりに行こう』と来てくれます。常連さんが戻るまではなんとしても持ちこたえます」という決意も。
秋葉原観光推進協会理事長の泉登美雄大使からは「メイドカフェも再開しました。メイドさんはマスクを着用し、お客さんの両脇にはアクリル板を入れて営業しています。7月10日から秋葉原でイベントを開催するので、参加者にはマスク着用と手の消毒をしてもらいます。開催者側の対策として、食品にかかっても安全な次亜塩素酸水をドローンでまこうか、まく時には光の演出を入れてエンターテイメントにしようか、なんてアイデアが出ています(笑)」と明るい話題が。きっと盛り上がりますね。
旅行会社や旅館を営む大使の方々は、3月からの厳しい状況を話してくれました。
話題はGo Toキャンペーンへ。OTAを通さずに、宿泊施設独自で販売できる仕組みですが、澤大使から、「今回のキャンペーンは宿直販ができると聞きましたが、仕組みを丁寧に教えてほしい。うちのように宿直でお客さまからの予約が入る宿にもキャンペーンを活用しやすくしてほしい。直販が使えないなら、困る」という強い希望も出ました。
VJ大使Zoom会議に参加した、各大使の発言の中で、これから課題になるだろう事柄を列記します。
「地域の方からは『宴会ができるのか。コンパニオンさんを呼べるのか』という問い合わせがある」
「エージェントには安心安全のお客さまを送ってくれるよう、お願いしたい。そのためには検温済みとか、安心安全のガイドラインが必要だ」
さらに「観光客に来るなと言ったままの状態。行っていいのか悪いのか、曖昧な空気が流れているから、これからは各地自治体のPR戦略が重要。大阪の吉村知事は桂文枝さんとともに『大阪にいらっしゃい!』とキャンペーンを打っている」とは、大阪在住の一般社団法人グローカル交流推進機構の横江友則専務。
私は旅の魅力を一般の人に伝える仕事をする立場から、危惧と対策を記します。
まず旅行することで、感染拡大にならないか、第2波が来ることはないかという危惧。この点は、観光地や旅館の3密回避対策が重要になります。
もう一つ、旅をする側も安心安全の体で旅行に出掛けなければならないということ。緊急事態宣言中に「ステイホーム」が定着したように、「安全な旅行者になる」ことの自覚を広く認識させなければと思っています。
(温泉エッセイスト)