【山崎まゆみの「ちょっと よろしいですか」33】新年のご挨拶 温泉エッセイスト 山崎まゆみ

  • 2019年12月31日

 2019年に亡くなり、今もなお惜しまれている樹木希林さんや八千草薫さんが温泉宿に残したエピソードを「週刊新潮」2020年新春号(12月26日発売)につづりました。

 樹木希林さんは、NHKテレビドラマ三部作で人気を博し、後に映画や舞台にもなった「夢千代日記」での撮影秘話です。原爆で被爆した主人公・夢千代は吉永小百合さんが好演。ドラマにアクセントを与えるコケティッシュな演技で樹木希林さんが存在感を出しています。 

 撮影は兵庫県湯村温泉で行われました。当時、湯村温泉観光協会長だった朝野繁さんがロケ地に誘致したこともあり、出演者とスタッフは朝野家にお世話になりました。湯村温泉には樹木希林さんの率直な人柄をほうふつとさせる秘話がありました。

 八千草薫さんの滞在秘話は、ノーベル文学賞作家・川端康成の代表作を昭和32年に映画化した「雪国」での話を書きました。語って下さったのは新潟県越後湯沢温泉雪国の宿高半の大女将・高橋はるみさんです。

 はるみさんは、新潟県女将の会の会長を3期務められ、新潟の女将の顔でもあります。川端康成が滞在した様子も語ることができる貴重な方であり、映画「雪国」の撮影の時は10歳、小学校4年生だったそうです。

 また高半には八千草薫さんのプライベート写真も残っていました。楚々とした女優としてのイメージとは違う、快活な装いのかわいらしい八千草さんがいました。 

 「撮影中は、風邪を引かないようにとスタッフも役者さんも、みんなニンニクをよく食べていました。八千草さんも召し上がっていましたよ」(はるみさん)。撮影はハードだったようです。

 八千草薫さんのエピソードは、長野県上諏訪温泉布半にもありました。ここには美空ひばり、石原裕次郎、島倉千代子、宇野重吉、三船敏郎、笠智衆、三崎千恵子と名だたる方々が滞在しています。「週刊新潮」には、2019年12月に生誕110年を迎え、取材の鬼と伝えられている松本清張の姿を描きました。
 「週刊新潮」の特別読み物では、これまで何度となく、温泉宿での著名人の滞在の様子をつづってきました。

 昭和の宰相である吉田茂、岸信介、中曽根康弘、池田勇人、大平正芳、福田赳夫、田中角栄。文豪は夏目漱石、林芙美子、川端康成、開高健。映画監督の黒澤明。スターでは美空ひばり、石原裕次郎、高倉健、夏目雅子など、日本人なら誰もが知る人物の宿での滞在秘話を取材するたびに思うことがあります。

 それは温泉に漬かれば誰もがほっとし、つい素顔をさらしてしまうこと。普段着けているよろいを脱ぐ場であるということ。すなわち温泉が比類を見ない、価値ある場所だという証しです。その役割は変え難く、なくしてはいけない。

 数多くのエピソード、物語を生んできた温泉地や宿の魅力を紡ぎ、多くの人にその価値を伝えることができたなら、きっと宿泊産業のお役に立つのではないか。1泊2食の宿泊料金という名目だけでなく、温泉文化を支える旅館が存続するための料金であることを多くの方に理解してもらう。それが私にできる仕事だと信じています。

 本年も宿泊産業の皆さま、観光業界の応援団でありたいと思っております。微力ながら、お役に立てればうれしいです。 (温泉エッセイスト)
       

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