【寄稿】Go Toトラベル再開時に求められる安全対策 甲南大学非常勤講師 山口一弥


厚生労働省ホームページより

Go toトラベルの流れを止めないために

 7月22日~11月15日の実質3か月余りで5260万泊の需要を創出したというGo toトラベルはコロナ禍に対する経済対策の大成功事例というべき政策だろう。一方、その注目度の高さ故か、当初から予想されていた乾燥と気温低下に伴うこの冬のコロナの感染流行第3波に世論はGo toトラベルの停止を求め、政府も呼応する形になった。

 年末年始における旅行のかき入れ時を見越していた旅行及び宿泊業界からは悲鳴が聞こえてくる。Go toトラベルによる経済対策の流れを止めてはいけない。しかし、政府は世論に配慮をして約2週間本事業を止める再開あれば、単に感染者が減少したことで善しとせずに安全に旅行を再開させるための一層の取組が求められる。そこで、再開後には旅行者に対してコロナに感染していないことのエビデンスを今後は求めるということはできないだろうか。

 もちろん、PCRや抗原検査での陰性結果を宿泊施設に提示することを義務化できれば、最も安心かもしれない。しかし、Go toトラベルの利用者全員の検査を受け入れるためには検査所の一層の拡充が求められる。そこで、現状の仕組みでできるエビデンスとして政府が作成した新型コロナウイルス接触確認アプリCOCOAの提示を求めるという仕組みを取り入れられないだろうか。

 

COCOAの活用

 台湾や韓国が新型コロナウイルス感染対策として感染者追跡アプリを導入して押さえ込みに効果を出していることは広く知られている。しかし、日本では個人情報保護やプライバシーの面からGPSを活用した追跡アプリではなく、感染者と濃厚接触があったのかをBluetoothで確認する接触アプリとなった様だ。しかも、政府は当初、国民の6割がDLしないと効果が発揮できないとしていた。2020年12月18日の厚労省の最新の発表ではDL数は2191万件で陽性登録件数は4673件と発表しており、6割には程遠い数字となっている。

 そこで、PCRや抗原検査よりも手軽で、しかもコロナ感染者との接触に対して効果が期待されるCOCOAによってGo toトラベルの安全性を高められないだろうか、というものだ。COCOAの活用によって政府には新型コロナ感染のビッグデータ活用にも結び付けて今後の対策にも役立ててほしい。

 

厚生労働省ホームページより

 

より安全な観光施設対策

 さらに、宿泊施設や観光施設での一層の感染対策も求めたい。例えば、こういった施設へのサーモグラフィーカメラや空調機器の導入の拡充等利用者への検温や消毒、換気の強化といった感染症への一層の対策が検討される。週末、スーパーマーケットに買い物に行く度に思うことなのだが、検温の実施がされていないこと。入場人数の制限等もせずソーシャルディスタンスが保たれない会計時の長い行列。誰が触ったかもわからない汚い消毒液等デパートに比べて非常に対策が甘いことが気になっていた。同様に観光施設全般にも同様な印象を受ける。

 サーモグラフィーカメラについても現在では顔認証によって精度を上げている。こういった安全対策を施していれば利用者はより安心を感じるはずだ。国境での水際対策には非常に神経を尖らせている一方、海外旅行については当分回復が見込めないため国内旅行に頼らざるを得ない状況の割に観光施設での感染症対策はどこか甘い気がする。観光施設は地域への感染者を食い止める最終ラインと自覚をし、行政も観光施設への感染症対策の補助金拡充等対策を後押ししていかなくてはGo toトラベル再開への世論の理解は得られない。

 

 
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