【寄稿】新型コロナウイルスに対して旅館がなすべきこと 立教大学観光学部教授 橋本俊哉

  • 2020年4月4日

 観光行動は心理面に大きく影響される。今回の新型ウイルスのように未知の部分が多く、しかも目に見えない要因に対して人びとが漠然とした「不安」を感じるのは避けられない。その意味では、東日本大震災後の放射性物質と似ているが、放射性物質は発生源が特定されていたので、お客さまは「発生源に近づかない」という原則に沿って動けた。しかし、感染者が全国に広まっている現状は、当時とは異なる意味において、観光行動自体を抑制する要因となってしまっている。

 こうした中で、旅館や旅館業界は何をなすべきだろうか。このような心理状態での旅行の特徴としては、旅行期間は「短縮」され、旅行先は「遠距離から近距離」へ、旅行内容は「新規から旧知」へと変更される傾向にあることが分かっている。したがって集客にあたっては、遠方からよりも近場のお客さま、初めてのお客さまよりもなじみのお客さまの集客に注力することが、理にかなっている。

 お越しいただいたお客さまに対してはどうだろうか。大切なことは、安全対策に加えて、お客さまの不安を取り除き、心理的にも「安心」して滞在していただけるために、なすべきことは何なのかを考えることである。お客さまに「安全」に過ごしていただくために、館内の殺菌・消毒や換気を頻繁に行うなど、基本的なウイルス対策を丹念に行うことは必須である。加えて、例えば、お客さまから安全対策について聞かれた際に、取り組みを1枚にまとめて渡せるようにしたり、従業員が的確に答えられるよう、十分に情報共有しておくこと等が考えられる。

 なお、同じ観光地内の旅館でお客さまや従業員への二次感染が起きてしまうと、その旅館への影響は多大なものとなり、新型ウイルスが収束してからも、その観光地全体への影響は長引かざるをえない。将来の風評被害を未然に防止するためにも、観光地単位で予防対策を共有し、一丸となった取り組みを続けることが重要である。

 春の行楽シーズンを迎え、自粛ムードを拭い去って旅行したいと考えるようになれば、「安心」と思える宿泊施設を選ぶだろう。常連のお客さまは、たとえ今お越しいただけなくても、御旅館の状況を気にかけ、時宜をみて泊まりに来て励ましたいと考えているはずである。それに応えるためにも、安全確保に向けた日々の取り組みは欠かせないだろう。

 
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