【学術×現場 7】旅館の朝食問題。何を出すかより誰が出すか。 福島規子


 旅館では「朝食に何を出すか」よりも、「朝食は誰が出すのか」の方が切実な問題である。とにかく人手が足りない。

 大型観光旅館では少ない人員で回せるようバイキング形式を導入したものの、係は料理補充だけで手一杯で顧客への声掛けやきめ細かなサービスもままならない。

 「ゆっくりお休みになれましたか」「今日はどちらにいらっしゃるご予定でしょうか」といった会話を交わすこともなく、料理台を指し示し「どうぞお好きなものをお取りください」と説明するだけである。また、顧客の前で料理人がオムレツを作るライブキッチンも以前のような目新しさは消え、もはや人手不足によるサービス低下を補うほどの感動や魅力はない。

 一方、御膳で朝食を提供する中小規模旅館の人手不足問題はさらに深刻だ。常態化している中抜けや、たすき掛け勤務は従業員の蓄積疲労を引き起こし、慢性的な全身の倦怠(けんたい)感や注意力、集中力の低下を招いている。22時退社、翌朝7時出勤では自宅での滞在時間は正味8時間程度しかない。「慣れれば問題ないから」と詭弁(きべん)を弄(ろう)しても睡眠時間すら取れないのが現実だ。この勤務体制が退職の引き金となっている事実は否めない。

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