
お宿の現場では、いつも何らかの不具合が頻繁に発生しています。その不具合は場当たり的な対応で解消を図ろうとすることが多く、効果が限定的で、再発を繰り返すケースが多いのです。
経営者や女将が疲弊しているお宿は、こうした問題が顕著に表れる傾向があります。
原因が明確で解消策が単純な場合は、場当たり的な対応でも効果があるかもしれません。
しかし、原因が複雑で本質的な問題を抱えている場合は、より根本的な方法を検討する必要があります。
そこでまず、不具合の原因を特定することが不可欠です。原因を特定できなければ、効果的な解消策を見つけ出すことはできません。
また不具合発生後の一連のプロセス(原因特定、解決策の選定、実践)に加えて、不具合の多発という体質改善にも取り組んでみましょう。
その切り口は三つあります。一つ目は「可視化」、二つ目は「共有化」、そして三つめは「標準化」です。
「可視化」とは見えないものを見えるようにすることです。
「共有化」とは複数の人や部署で、情報を共同利用できることです。
「標準化」とは物事を統一化・単純化し、同じように扱えるようにすることです。
「可視化」「共有化」「標準化」の重要性を理解したら、次にこれらの要素が整備されていれば、どの不具合を防げたかを検討しましょう。それがあなたのお宿で優先的に取り組むべきアクションプランです。
経営計画に合わせたアクションプランはよく見かけますが、お宿の経営者にとっては、やや抽象的に感じられるかもしれません。
中小企業では目的達成のための積極的なアクションプランは必要ですが、お宿内部の不具合がその実行を妨げている場合があります。
それは数値化されず、目に見えにくいながらも、現場に潜む深刻な問題です。そして問題意識はあっても、具体的な対策が分からず、結局何もせずに終わってしまうケースが多いのです。
今回はこの難問に向き合ってみようと思います。
では早速次の段取りで実践開始です。
まず、わが宿の「不具合リスト」を作成しましょう。普段、どのような不具合が頻繁に起きているかを洗い出します。ここでは接客係、フロント・予約係、調理場といった部門別のカテゴリーに分けて出してみましょう。そして部門間の連携、例えば接客と調理場、フロント・予約と調理場、営業と経理といった関係の中で、不具合を抽出してみます。
不具合リストの作成が終わったら、次は「仮説設定」です。
わが宿において「可視化」「共有化」「標準化」が、これら不具合が生じた場面で、もしできていたと仮定すると、いったいどうなっていたでしょうか。不具合の未然防止、もしくは軽度の不具合で済んだのではないかと想像できる場合があります。
これがあなたのお宿で今、取り組むべき、「可視化」「共有化」「標準化」の具体的な内容なのです。
「可視化」「共有化」「標準化」を理想の状態へ目指すと、膨大な時間と労力が必要になります。だからまずは、現在発生している不具合を、解消するための仕組みづくりを優先しましょう。
これが経営者も現場スタッフも、ともにふに落ちるオペレーション改善の方法です。ぜひチャレンジしてください。
失敗の法則その49
不具合が生じたら、その都度場当たり的に解消を図ろうとしている。
その結果、同じ不具合が何度も現れる。
だから、表面化した不具合に対して「可視化」「共有化」「標準化」で原因そのものを解消していこう。
https://www.ryokan-clinic.com/
(観光経済新聞25年4月21日号掲載コラム)