【地方創生トップインタビュー】鳥取県 平井伸治知事に聞く


平井伸治知事

地域素材生かす鳥取県観光施策

オリパラ、WMG、万博契機に

次はストレスフリー「おっとり県」

 地域の素材を生かして「蟹取県」「星取県」への改名や、アクティビティやアニメに関する事業を推進するなど、積極的に観光誘客に取り組む鳥取県。平井伸治知事に現況と県の施策を聞いた。

 ――2019年の観光客の入り込みは。

 昨年から微増し、約1千万人だった。宿泊客全体では若干減ったが、温泉での宿泊は堅調に増えた。日韓関係の悪化による韓国人客の減少を受け、韓国路線が運休したことが大きく影響したが、一方で国内へのアプローチが奏功し、水木しげるロードや名探偵コナンなどアニメ関連や、砂丘など主要観光地への誘客をある程度確保できた。今年は、新型コロナウイルスの影響を受けているが、県としては全力を挙げてV字回復を目指す。韓国との航空路線や定期航路の運休に続き、1月11日に就航した米子―上海線、伸び続けていた米子―香港線も運休となりインバウンドは厳しい状況が続くが、皆さんと反転攻勢をかけて巻き返していく。

 ――現在運休中だが新路線・上海線への狙いは。

 訪日客の多角化を図るためだ。訪日客の半数以上が韓国であり、現状から努力をするにしても限界がある。これからは東京オリンピック・パラリンピック(オリパラ)や、30歳以上なら誰でも参加できるワールドマスターズゲームズ2021関西(WMG)、大阪・関西万博とビッグイベントが続く。集客を伸ばすチャンスとなる。

 ――訪日客の受け入れ整備状況は。

 キャッシュレスや二次交通への対応を進めている。宿泊や飲食の組織と連携してアリペイなど海外型のキャッシュレス決済に対応する汎用性の高い決済端末の導入を推進し、普及率は全国のトップ5に入るまでとなった。しかし、まだ大都市には遠く及ばず、県独自の政策も投入しながら普及率を高めていく。二次交通に関しては、米子空港―JR米子駅間で無料シャトルバスの実験運行を行うほか、訪日客向けに3時間乗り放題できる「2000円タクシー」サービスも助成金を出して運行している。また、高まるレンタカー需要へのPRも進めていく。

 ――地域で活動するDMOはどう評価するか。

 県域をまたぎ誘客をしないと他地域と勝負できない。山陰両県をつなぐ「山陰インバウンド機構」ができて観光に対するカルチャーが変わり、魅力や発信を足し算、掛け算して国内外に売り込むことが可能となった。現在は、MaaSの実証事業も取り組んでいる。他にも、県東部と兵庫県北部の地域活性化を行う「麒麟のまち観光局」、県中部に岡山県北部まで羽を伸ばした「鳥取中部観光推進機構」がある。DMOを中心に情報発信のモデルチェンジが行われており、非常に効果が高いと評価している。

 ――隣接する島根県とのその他連携は。

 5月8日から京都を出発し、鳥取を通り、島根に行く長距離列車「ウエストエクスプレス銀河」が走る。そこで、レンタカーへの乗り捨て支援を行うなど、両県で協働して誘客に取り組む。

 ――観光促進における課題、その解決策は。

 まず、訪日客の増加に備えた、観光業界の人材育成が必要。民間教育訓練機関において観光人材育成プログラムを実施するとともに、県内の高等教育機関と連携した寄付講座開設に向けた取り組みを始めている。また、高齢化社会に向けた「バリアフリー観光」がこれからのテーマになる。車いすで行ける観光スポットや手話ガイドの紹介をウェブを通じて行うほか、タクシー会社と協力してユニバーサルタクシー(UDタクシー)の普及を進めている。今では小型タクシーの半分が車いすを車両の後ろから載せられる黄色いUDタクシーだ。また、県内の完全バリアフリー化した老舗旅館では、障害者やその家族からの予約が入っている。ユニバーサルツーリズムが、潜在需要や新規顧客の掘り起こしにつながる。今後はパラ大会の合宿招致のレガシーを生かすなど、経験値を高めて安心して楽しめる観光地を築いていく。高齢化社会での需要減への対策としたい。

 ――今年の展望は。

 夜空を県の新品種米「星空舞」が流れ星として舞うイベントを行うなど、県が名乗る「星取県」をアピールしていきたい。冬場には全国一の水揚げ量を誇るカニがある。こちらは「蟹取県」というキャッチフレーズで売り出している。カニが初競りで世界一の500万円の値が付きギネスに認定されるなど、世界でも知られるようになった。また、オリパラの年なので、スポーツリゾートとして展開する。目玉は「サイクリストの聖地化」だ。3月22日には白砂青松の弓ヶ浜に自転車道が完成する。美保湾や大山を望めるコースは、国内外の関係者が絶賛している。加えて、3月中には自転車用のルート案内を県横断・縦断の一般道に取り付け、サイクリングルートとしての活用を目指す。

 ――WMG、大阪・関西万博への期待は。

 京阪神からの観光客が一番多い。関西空港からの訪日客も含め、関西でのビッグイベントは観光需要を押し上げる契機となる。欧米豪からの誘客も見込めるWMGは、今回初めてアジアで開催される。オリパラで感動を覚え、エントリーする人も多いだろう。県でもアーチェリー、自転車、柔道、鳥取が発祥のグラウンド・ゴルフの4競技6種目が開催される。申し込みも一部が定員を超えるなど盛況だ。万博は、関西広域連合の一員として、各県と協力して誘客に力を入れている。オリパラのレガシーをWMG、万博とつなげていく。

 ――IRについてはどう考えるか。

 地元で議論はあったが、私個人としては日本の中での役割分担があると思っている。関西の二つの候補地からは近く、刺激的で都会的なレジャーとともに自然やゆとりを感じる旅先として選んでもらえるようにする。

 ――次は何取県に改名するのか。

 最近は女性のストレスオフが話題だが、鳥取県は通勤時間が全国一短いなどストレスオフナンバー1の県だ。人の絆が特に深く、みんなで助け合って子育てをする土地柄でもある。女性にとって暮らしやすく、旅に行けばストレスを解放する場所であることから「おっとり県」に改名してはどうかと考えている。

 ――新型コロナウイルスへの対応は。

 発生後から医師会と協議をするなどして独自対策を打ち出すなど先手を打っている。観光業界に対しては、特別融資制度を1月から開始し、金利を0.7に引き下げ、保証料もゼロにするという独自の対策をしている。戦略転換や新たな支援も適用しながら、窮地を乗り切っていきたい。

 ――最後に、鳥取県の魅力を三つ挙げるなら。

 砂丘の夕日や温泉でゆったりする「おっとり県」、コナンや「水木しげるロード」、「四十七大戦」などアニメの聖地を生かした「まんが王国とっとり」、砂丘でスポーツやサイクリングなど行動派の聖地となる「アクティビティ」の三つを楽しみにぜひ訪れてほしい。

平井伸治知事

(2月20日、東京の都道府県会館で。聞き手=本社・長木利通)

 

 
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