【地方創生と観光ビジネス8】小田原のなりわい文化とまち歩きで「ういろう」の由来を知る 淑徳大学経営学部観光経営学科学部長・教授 千葉千枝子

  • 2022年7月20日

 小田原で開催された第21回「全国産業観光フォーラム」で須田寬氏の基調講演を聴講して、ポストコロナにおける産業観光の重要性をあらためて認識した。

 産業観光とは、歴史文化的価値の高い産業遺産やものづくりの現場等を観光資源とするテーマ別観光をさす(同氏の資料より抜粋)。その発露は2005年、愛知県で開催された国際博覧会「愛・地球博」にあった。当時、JR東海の相談役だった須田氏は、中京圏の振興に産業観光の推進を訴えた。

 筆者は神奈川県の観光審議委員を任期満了の10年務めて、年度末に退任したばかり。箱根や湯河原、横浜、鎌倉など一大観光地に恵まれ、三浦半島のサイクリングや丹沢ハイキングの整備も進んだ。横浜港や大黒ふ頭には客船クルーズが寄港し、再国際化した羽田空港にも近い。神奈川県の観光には学ぶことが多かった。

 昭和の時代には観光が無縁だった川崎市が、工場夜景ブームの火付け役になったことは記憶に新しいだろう。

 県は産業観光を京浜臨海工業地帯へとエリアを広げて、スタディツーリズムを確立した。こうした努力が実り、それまで横浜中華街へ直行していた修学旅行生たちを、通過地・川崎にワンストップさせる誘致に成功した。

 今回、フォーラムの会場となった小田原は、江戸時代は東海道五十三次の宿(しゅく)で栄えたが、新幹線が開通してからは、やはり通過地となってきた。首都圏から箱根方面への乗り換えや小田原城の日帰り観光が主たるところで、果たしてどのような魅力があるのか半信半疑でいたが、それが予想を大きく裏切ってくれた。

 テーマは「なりわい文化とまち歩き観光」。2日目には、まち歩きツアーと分科会が6コース用意され、炎天下のなか約2時間、「伝統なりわい」のツアーに参加した。ガイド役は、特定非営利活動法人小田原まちづくり応援団の皆さん。参加者にはインカムが配布され、まるで客船クルーズのエクスカーションで陸上観光をしている気分で、説明がよく届く。

 小田原市は、「小田原宿なりわい交流館 街かど博物館ガイドマップ」を日英で作成し、老舗の名店紹介をしている。単に店舗紹介をしているのではない。それぞれに歴史やなりわいが学べる博物館としてのコーナーを設け、求めに応じてスタッフが説明をしてくれるのである。立派な産業観光だ。

 そもそも「なりわい」とは、生業、家業とつづるが、小田原のまちには平仮名がしっくりくる。とりわけ充実していたのが、小田原市観光協会会長の外郎藤右衛門氏が営む株式会社「ういろう」の蔵のなかだった。外郎家は中国で約1千年、日本で6百数十年も続く名家で北条早雲の時代にさかのぼる。菓子のういろうより以前に、家伝の薬を売ってきた。今世、博物館になった蔵で25代目当主の口から歌舞伎「外郎売」の誕生秘話を聞いて驚かされた。なりわいの、真の意味を知らされた。

 ツアー終了後は松蔭大学・古賀学教授を座長に、商工会館の一室で分科会が開催された。まち歩きツアーは有償ガイドだが、小田原城内は別団体のボランティアガイドがいて、うまくすみ分けがなされている。これだけ高いポテンシャルがあるのだから、「安売りしないで」と発言させていただいた。

(淑徳大学 経営学部 観光経営学科 学部長・教授 千葉千枝子)

 
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