【地方創生と観光ビジネス18】大槌町での食のツーリズム 学んで食べるサーモンと鹿肉 淑徳大学経営学部観光経営学科学部長・教授 千葉千枝子

  • 2022年12月24日

 三陸・大槌町が今、頑張っている。東日本大震災で役場ごと津波に襲われ、町長はじめ多くの職員が犠牲になった大槌は、行政が機能不全に陥り復興も遅れた。この12年弱で少しずつ、志あるよそ者が集うようになり、活気が戻り始めている。

 その大槌を舞台に先日、「大槌食のツーリズムモニターツアー」が開催された。主催した大槌町観光交流協会の観光コーディネーター・服部真理さんを微力ながらも応援しようと、骨折した右足にギプスを巻いて駆け付けたが、着いてびっくり。三陸鉄道やみちのりトラベル東北、体験村・たのはたネットワークなど、強力な応援団がすでにそろっていた。

 ツアー前夜の夕食会場「三陸花ホテルはまぎく」もまた、活動を支えている。アワビの踊り焼きやフカヒレのあんかけなど渾身(こんしん)のメニューで、私たちを驚かせた。上手な演出だなと感心したのが、山海の幸に合う純米吟醸酒「源水」の試飲が用意されていた。大槌は水が清らかなことで知られる。町内を流れる源水川と、そこから湧き出す水に大槌産の酒米で造られた「地域おこし酒」に酔いしれた。その湧き水を明日、見学できるという。

 モニターツアーは”ラグジュアリーバス”で催行されると聞いていた。小回りがきく城山観光の小型バスは、細い路地や住宅地もスムーズに移動する。翌朝、一行はバスに乗り込み、まずはサーモン養魚場へと向かった。

 大槌の吉里吉里漁港では、「岩手大槌サーモン」の養殖事業が本格化したばかり。サケとサーモン、ひいてはサクラマスやマスノスケなど種類の違いを尋ねられ、あたふたしたところで、東京大学大気海洋研究所の院生から、養魚地の露店白板で解説されて納得した。

 途中、湧き水を見学して、魚のあとは肉。「『害獣』を『まちの財産』に」を合言葉に活動する「大槌ジビエソーシャルプロジェクト」のメンバーから、大槌のニホンジカが大量発生した理由や駆除の歴史、狩猟活動などを聞いた。

 震災後、三陸沿岸は人口減少に拍車がかかり、野生のシカによる農作物被害に悩まされた。筆者も幾度か釜石線で、シカと衝突したからと車内で足踏みしたことがある。だが、シカにも家族がいて、コミュニティーがある。ただ廃棄処分するのではなく、命の恵をありがたくいただこうとする取り組みは、SDGsの観点からも注目されている。

 さてわれわれは、定規や目打ちが用意された木机に向かって、彩色されたなめし革「大槌ジビエレザー」で、キーホルダー作りに挑戦した。手先の器用さが競われる。熱中しているうちに、お腹が空いた。

 ちなみに、ハンターたちが捕獲して食肉処理した大槌鹿は、MOMIJIのブランド名で販売されている。と同時に、ジビエ料理を開発、提供する店が増え始めた。

 昼食どころの割烹「岩戸」では実際に鹿骨スープのボーンブロスや鹿肉のオーブン焼き、玉ねぎのキャラメリゼに魅了され、盛られたいくらも光る桃畑サーモン丼をくるみしょうゆで食べると聞いたときには感嘆の声があがった。

 ツアー終盤のお買い物タイムは、小川商店に立ち寄って「源水」をお買い上げ。参加者の皆さんは、いきいきとした笑顔で解散した。

 (淑徳大学 経営学部 観光経営学科 学部長・教授 千葉千枝子) 

     

 
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