【地方再生・創生論 338】がん罹患者に相談の場を 松浪健四郎


 人気プロレスラーだったジャンボ鶴田選手が、わが家の近くに住んでいたので交流があった。山梨県の日川高から中大に進んだバスケットボール選手だったが、中大ではレスリングに取り組み五輪選手となった。ジャイアント馬場の指導を受けて、プロとして大成する。

 「米国に留学します」とあいさつに来た彼の顔は茶褐色、私は肝臓病だと察知する。しばらくして、外電はマニラで鶴田選手が死去したと伝えた。どうも比国での肝臓の移植が成功しなかったらしい。有名人であるがゆえ、日本臓器移植ネットワーク(JOT)に移植希望登録ができず、脳死ドナー(提供者)を求めて海外へ渡ったようだ。臓器移植法が脳死判定を認め、ドナーを募るがなかなか順調に運ばなかった。

 健康保険証の裏面、マイナンバーカードの表面、運転免許証の裏面にも「ドナーになります」と記入欄がある。誰かを救いたいという善意を求めているのだ。日本の移植医療も一流であるのだが、残念ながらドナー不足だ。ジャンボ鶴田選手の悲劇も、日本社会の移植医療の発展を理解せず、特殊な医療と決め込み、閉鎖的風潮に負けた結果だったと私は思っている。1997年、臓器移植法が成立したが、議員連盟の会長であられた医師の中山太郎先生のご尽力を忘れない。「脳死を人の死と認めるかどうか」の議論に明け暮れ、なかなか進まなかった。まだぬくもりのある身体もつ脳死患者を、「死」と認めるには世論の高まりを待つ必要があった。で、とりあえず、本人の書面による意思表示がある場合に限って、「死」と認め、移植ができるようになった。

 そして、平成22年に法が改正され、家族の承諾によって臓器提供が可能となった。また、15歳未満の子どもからの提供も認められるようになった。こうした条件の緩和は、国民間に移植医療の理解が深まった帰結であろう。中山太郎先生は、「まず脳死を死として認めることが大切」だと語られていた。欧米に比して時間がかかったけれど、少しずつドナーが増加傾向にあるのがうれしい。そして、法律が施行されて26年目、脳死臓器提供者が千件に達したと日本臓器移植ネットワークが発表した(2023年10月)。が、春に法律の立役者であられた中山太郎先生は鬼籍に入られた。議員立法としてでしか成立しなかった法律、私も議連の一員として貢献できたのである。

 読売新聞は、海外で手術をあっせんする仲介業者の存在について報じた。わが国のドナー不足を商売にする業者がいる。が、患者側からすれば、命がかかっている問題だけに、すがる気持ちも理解できないわけではないが、政府も規制を急ぐ必要がある。特に発展途上国での移植は、臓器売買との誤解を招く。で、医療技術も高水準ならともかく、容体を悪化させたとしても、誰の責任でもないとは話にならない。

 政府も工夫して脳死臓器提供者(ドナー)を増加させようとしているが、さらに啓発が必要だ。生前の意思表示を増やすために、厚生労働省やJOTは、自治体で意思表示カードを配布したり熱心に取り組む。が、かかる啓発運動が成功しているとは思えない。JOTの発表によれば、移植を待つ患者は1万6千人もいるのだから、ドナーが求められる。私は、保険証にも運転免許証、マイナンバーカードにも家内のサインと共にサインをしている。多くの人たちが意思表示をし、一人でも救うことが大切だと考える社会であってほしいものだ。

 政府は移植医療の体制を整えるため、脳死下の臓器提供や移植の実績が十分な拠点病院を選定している。地域の医療機関に医師らを派遣し、脳死判定などに協力する事業も政府は始めた。海外へ行かずとも、わが国で移植治療を受けることができるように、国だけではなく自治体も各種団体も努力すべきである。人の命を救うために、もし脳死者が出たならドナーになっていただきたい。私は、その意思表示を明確にしている。そのような人を増やすことができるように自治体にも期待する。

 
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