【地方再生・創生論 329】社会課題の解決へ「農福連携」 松浪健四郎


 少子化が進み、全国の学校の統廃合が常識化してきた。それでも、障害児のための支援学校が増加し、現在では全国で1178校も存在する。教員も支援学校教員免許が必要となり、専攻する大学生も多くなってきた。障害児の障害も多岐にわたるため、さまざまな専門性に特化した教育が行われている。一般の学校よりも児童・生徒に手がかかるゆえ、人件費支出は大きく、私立学校は経営に苦しむ。

 全国で私立の支援学校は、わずかに15校しかない。赤字覚悟で経営する高徳の士といえども、国や自治体の支援なくして経営は困難であるが、昨年より政府も重い腰を上げた。

 15校の私立学校のうち、大学法人が経営するのは1校だけである。わが日体大の北海道網走市にある日体大高等支援学校だ。もちろん赤字で苦しんでいる。文科省も私立大の特殊な付属支援学校を評価してくるようになり、赤字幅は半減した。日体大生が支援学校教員免許を取得するための実習校ではあるが、大学法人が設置する特色を工夫する学校でもある。

 生きる力を培うために、教育目標は3本柱を立てた。まず、「スポーツ教育」である。たくましい体、健やかな心を育むために、日体大の特徴を生かす。次に「労作教育」である。作業実習や就労実習を通して、働くことの楽しさや尊さを培う。網走市の協力を得て、広大な農地での実習は、生徒たちの心をも耕す。ワイン造りにも取り組み、ぶどう栽培にも力を入れている。農業の大切さや醍醐味(だいごみ)を学び、体験的学習活動に力を入れている。

 岸田文雄総理は、7月中旬に栃木県足利市のこころみ学園とワイナリーを視察された。わが国の「農福連携」の草分け的な存在であるとされ、総理は福祉と雇用の連携強化に向けての視察だった。

 障害者の雇用を確保しながら、農業分野での労働力の確保を模索しているのだ。荒廃農地の解消は、農業従事者を増やす以外に手立てはない。政府はかかる社会課題の解決の一つには「農福連携」を考えている。が、都市部の支援学校では、容易に実習のための農地を確保するのは難しい。

 網走市の日体大支援学校の農場は広大で、多くの農作物を収穫している。来年くらいからは、ぶどうからワイン造りにも取り組む。「労作教育」の作業実習は、すでに「農福連携」の先取りをしているといえようか。

 そして、「情操教育」も1本の柱として立てていて、豊かな感性や創造力を養うようにしている。校舎3階は情操教育に対応した特別教室となっている。この3本柱がバランスのとれた形で生徒たちの毎日を刺激する。

 オホーツクの大地で、日体大が挑戦する支援学校だが、全国から生徒が集まっている。卒業後の生徒たちは、介護福祉士や理容師になったり、アスレティックトレーナーを目指す者もいるが、一般企業に就職する生徒が多数を占める。比較的障害が軽く、自由に仕事を選択できる生徒たちだが、政府は「農福連携推進ビジョン」(令和元年)をもっと宣伝すべきだ。

 農山漁村振興交付金に「農福連携型」を設けられたことも、あまり知られていない。障害者の雇用に政府は熱心で、手厚い保護振興策をとってはいるが、十分にその施策が社会に浸透しているとはいえない。

 「農福連携」は、農業人口減少が著しいだけに重要である。だが、全国の支援学校は「農福連携」のための準備や教育をしているだろうか。農業を好きにする方向づけなくして、障害者たちを農業従事者にすることはできない。

 地域の特性がある。都市部での「農福連携」は困難であろうが、地方にあっては障害者の雇用確保の面でも、農村の課題を解決する意味においても有効である。まず各自治体は、農家と支援学校の仲をとりもち、「農業のおもしろさ」を教えるために尽力してほしい。政府の政策が立派であっても、それが絵に描いた餅であれば、政策は効果を発揮しない。福祉政策にその傾向が多々あるのは残念だ。

 
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