【地方再生・創生論 291】「フェアトレードタウン宣言」 松浪健四郎

  • 2023年1月8日

松浪氏

 人権問題が、かまびすしい。アメリカの黒人が白人警察官に殺されて以来、人種差別のデモが全米中で広がった。そして、中国に住むウイグル人やモンゴル人の同化政策は虐待、非人道的とされ、世界の国々が批判する。私はこの少数民族の住む地を旅行した体験があるが、漢民族支配の地に映ったのは確かだった。

 人道主義の問題がエスカレート、ウイグル人の地で産する綿を用いた製品の輸入禁止策まで飛び出し、日本の有力企業もヒヤヒヤしている。強制的に労働させられているとして、非買運動化しつつある。製品を販売する企業は、商社や、その下請けを使って原料を買っているため、人道問題に直面するとは驚きでしかない。

 アメリカは、中国を敵視する道具として経済問題からゆさぶりをかけている印象を受ける。世界の工場と表現される中国、ついにGDPはアメリカに肉薄してくると、さすがの大国も慌てる。ウイグル人等の強制労働によって作られる綿花、その加工を経て綿製品を日本の有力企業も製造販売中だ。今後は、安価だからという価格問題ではなく、販売までの場所と過程が問われる時代に突入している。

 発展途上国では、子どもたちが学校に行かずに農業等に従事している。しかし、子どもたちに学校教育を受けさせる必要があるのにも行かせず、労働を強いる。で、先進国では、そんな途上国の品、産品を輸入しないようにする運動が、じわりじわり広がりつつある。世界フェアトレード機関(WFTO)や国際フェアトレード機構(FI)が認証し、国際認証を受けた商品を「フェアトレード商品」としてラベルを付けて輸出しているが、この運動は欧米で理解されつつある。

 公正な取引、無計画に農薬を使わない農産品、強制労働でなしに正規の労働、男女差別なし、安全で健康的な労働条件、環境に配慮する、事業の透明性を保つ、生産者に公正な対価を支払う、といったフェアトレードの10基準を満たした製品がラベルを獲得して輸出できる仕組みだ。社会的に弱い立場の小規模生産者であっても、10の基準を守れば経済的に自立することができる。同時に途上国の人たちに先進国の考え方を伝え、実践させる方策でもあろう。諸外国で売れる物を作る条件を教え込むことが、途上国の近代化につながる。

 日本でも、自治体が「フェアトレードタウン宣言」を行い、この理念に共鳴した市民や事業者たちが、この普及のために努力されている。世界の平和と発展、友好等に貢献するため、一つの啓蒙運動として深く浸透する可能性をはらむ。既に全国各地にフェアトレード専門店があり、スーパーや店々でも販売されるようになってきた。2011年に熊本市が最初のフェアトレードタウンとなり、15年に名古屋市、16年に神奈川県逗子市、17年に浜松市が認定を受けた。町ぐるみで途上国を巻き込んで、国際社会に貢献して平和へと進む。

 全国の自治体が、市民団体、行政、学校、企業、文字通りの町ぐるみでフェアトレードを推進して、「フェアトレードタウン」(FTT)になるべきである。この運動は金がかからないに加え、子どもたちの教育にも役立つばかりか国際性を学ぶことにもなる。ロンドンやパリといった大都市も認定されている。また、途上国の小さな自治体だって認定されている。

 逗子市の「フェアトレードタウン宣言」を読んで感動した。永い間、「池子弾薬庫」の米軍からの返還闘争を経験してきた市にあって、国際力と人権の尊重に資する運動に敏感だという印象を受ける。単に地域社会だけを考えるのではなく、世界の一員として主体的に行動する市民主権の独自の考えが伝わってくる。進歩的かつ高邁(こうまい)な宣言文は、全国のどの自治体にも通用する立派なものだ。

 自治体一つ一つが、逗子市のような考えを持ち、国際社会に貢献すれば、世界の人々の暮らしや社会を変えることができる。私たちが、フェアトレードラベルの付いた商品を購入することによって人権と平和を守れるのだ。

 
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