【地方再生・創生論 290】新しい年、地域の魅力づくりを考えよう 松浪健四郎


松浪氏

 新年あけましておめでとうございます。

 2023年を迎えて、老婆心ながら心配することが多い。本当にニッポン国は大丈夫なのだろうか。重要な諸問題が横たわり、政府はその解決策に手もつけず、旧統一教会問題が重要問題であるかのごとく国会で鎮座していた。ロシアがウクライナに軍事侵攻し、戦争が続く今、のんびりと新春を祝う気分になれないのは私だけではあるまい。

 いよいよ海外からの旅行者が増加する年になる気配が感じられる。コロナ禍に敏感な日本人ではあるが、欧米人をはじめアジア人以外は意外に鈍感であるゆえ、入国審査が緩和されビザの発給が進めば、にぎにぎしくなると期待できる。ただ、中国と韓国の旅行客がどこまで伸びるのか、ちょっと不透明である。インバウンドの与える経済の影響が大きいだけに、今年はコロナ禍以前に戻ってほしいという願望は、あらゆる業界に沈殿する。

 観光客が増えると、地方も元気になる。農産物だけにとどまらず、土産物も売れる。観光業界が元気になれば、地方にもその元気が波及してくる。地方再生・創生の突破口は、申すまでもなく、「観光振興」である。2020年1月、「Wedge」誌2月号は、「幻想の地方創生」を特集した。2014年11月に「まち・ひと・しごと創生法」を政府は成立させ、地方創生に取り組む。が、同誌は、自治体の人口争奪戦で、どこの自治体も疲弊し、もはや地方創生疲れを起こしているというのだ。

 「幻想の地方創生」とうたっている割に、人口問題を中心に捉えるだけで、私たちの期待するアイデアを提供してくれていない。ただ、政府の「まち・ひと・しごと創生総合戦略」において、「観光による地方創生を実現する必要がある」と認識されたことを評価する。戦略では、DMO(Destination Management/Marketing Organization)なる官民一体となった組織を作り、今までの観光協会のような団体ではなく、新たに観光庁が認定する法人を登録させることにした。政府は地方創生推進交付金として、かなりな額の金を計上し、DMOの普及を地方創生の一手段として全国に働きかけた。観光地としての発展のためのブランディングや観光事業の推進策として、DMOの存在感が期待される。

 問題は、DMOを運営するに当たり、補助金や交付金だけを頼りにしていては、やがて行き詰まる。加えて、人材も大切である。かつての自治体の第三セクター方式の思考では失敗する。欧米のDMOのごとく自主財源を産むノウハウを持つ必要がある。また、民間業者に任せっきりでも運営は難しい。観光税、入湯税の一部を財源にするアイデアもあるが、あくまでもその地域の活性化のためであり、観光業界の関係者だけのDMOでないことをきちんと銘記しておかねばならない。

 「Wedge」誌は、センセーショナルな見出しで読者に興味をもたせたが、人口の争奪戦が地方創生策の一つで東京一極集中は止まらないと書く。次に観光政策が大切であると説き、あたかも地方創生策の切り札であるかの印象を与える。納得できる部分もあるが、地方再生・創生は各自治体の戦略にかかっていて、その方策を羅列してくれていない。「地域の活性化には、行政サービスの生産性向上が不可欠であり、自治体の広域化を促すような交付税改革が必要だ」(佐藤主光)と記述し、さらに合併を考えさせるべきだと書く。交付税の現状からすれば、説得力もある。

 新年を迎えて、高齢者へのサービス、人口増加のための魅力づくり、オンリーワンの存在感ある自治体づくり等々を考えてほしい。昨年よりも今年は、全ての面で上回る目標を掲げ、一歩一歩前進すべきである。「Wedge」誌の言う「人口争奪戦」だけが地方創生・再生ではない。とはいえ、魅力ある住みやすい地域、美しい自然があり、住民サービスの向上が見られて人々は転居する。目標を立てて自らの自治体を元気にしてほしいものだ。

 
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