【地方再生・創生論 288】「国頼みの発想」が許されなくなった 松浪健四郎

  • 2022年12月18日

松浪氏

 安倍晋三元総理の国葬、物価高、旧統一教会問題等の影響でか、岸田内閣の支持率は落下するばかり。ウクライナの問題、コロナ禍の問題、政府にすれば頭の痛い諸問題に苦しめられ、明るい話題が浮上してこない。自民党内では、内閣支持率と自民党の支持率を加えて50%を切れば、その政権は危機と読む。そこで臨時国会の岸田首相の所信表明演説に耳を傾けた。この内閣は、本当に大丈夫なのだろうか、演説後の私の率直な感想である。

 地方再生・創生については、最初に福島県の復興について語り、それを象徴的なものとした。自然災害が相次ぐため、基本計画を策定し、中長期的かつ継続的に、防災、減災、国土強靱(きょうじん)化に取り組みますと話すだけで、過疎化や農林・漁業の振興には一言も触れずじまい。実りの秋を迎えて、地方に関する一面に言及しない所信表明演説、土いじりをしたことがなく都会暮らししか知らぬ首相の限界を感じさせられたのは、私だけではあるまい。

 草稿ライターがいるとはいえ、首相が考えること、主張すること、感じたこと、やりたいこと等をきちんと話して演説原稿ができるのだから、私は代議士時代、いつも所信表明演説を幾度も幾度も読んだ。今国会の岸田首相の演説は、成績でいえば赤点であろうか。最も国を苦しめている少子化についての言及はゼロ、将来の心配を意識していないのだろうか。いくつかの国は、政策によって出生者数を増加させている。毎年、60万、50万人の人口減少が気にならないなんて考えられない。

 人口減少による労働者人口の不足、これらについても、経済政策や経済対策の中にも出てこず、中小企業をはじめ、農、漁、建設、介護、観光業の人たちが困り切っている問題を棚上げした。ビザなし渡航、個人旅行再開等、インバウンド観光を復活させるというが、人手不足で困憊(こんぱい)している現状の姿が届いていない。聞く耳を持つことを売り物にしている首相にしては、穴だらけという印象がつきまとう。

 労働者人口を補うかに映る途上国からの技能実習生の問題、あり方については、この国の経済を左右すると言っても過言ではない。首相は一言も触れず、イノベーション(技術革新)やスタートアップ(新興企業)に重点を置いて官民の投資を加速させるという。AI(人工知能)やバイオの分野にも力を入れて成長させるもくろみのようだ。が、介護、物づくり、食糧生産、観光業のごとく、人手のかかる分野の人不足、これをいかにして解消するつもりなのか、首相は語らなかった。

 結局、地方の問題は、所信表明演説では無視されたと決めつけていいようだ。いや、地方の問題や社会保障については、地方公共団体が、「しっかり取り組め」という暗示であると知るべきだ。岡山県の美作市は、独自にベトナムから農業実習生を迎え入れている。自治体が受け入れ機関となり、きちんとした管理とサービスによって実習生を満足させている。どの自治体も政府を頼ることなく、行動に移し、地域社会を守らねばならない。

 少子化も兵庫県の明石市に学ぶがいい。政府に妙案はなく、打つ手もないことが明白、独自策で子だくさん家庭を作るしかないのだ。高齢者人口が増えるばかりで、自治体の仕事が増えている。しかも、首相の演説の行間を読めば、各自治体は独立国のごとく、自分たちで多くの課題を克服していかねばならないと教えられる。今まで通りの行政だけでは足りず、商工会や農・漁業界の人たちと手を組んで地域社会の発展を考えねばならない時代に突入したと決めつけてもよいようだ。

 政府は、ウクライナ戦争から、あらゆる物の高騰に頭を痛めるに加え、安全保障にも気を配らねばならなくなってきた。内政について配慮する余裕がなくなってもいるかに見える。それゆえ、各自治体は、小政府となって、あらゆる政策に取り組む必要があり、「国頼み」の発想は許されなくなってきた。今こそ、自治体は、大胆に発想し、行動すべし。

 
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