【地方再生・創生論 282】希望者全てに「歯科検診」を 松浪健四郎


松浪氏

 後期高齢者になって感じるのは、まず疲労回復に時間がかかる。根気がなくなって、一つの作業に長時間取り組めない。外出するのが面倒くさくなる。なぜかよく眠る。重労働をして疲れると歯ぐきが腫れる。肉や魚よりも野菜と果物を好む。以上が私の状況であるが、「神奈川県後期高齢者医療広域連合」から「歯科健診のお知らせ」が届いた。

 「無料受診券在中」とあり、この機会にお口の健康チェックをしてみませんか、歯科健診を受けて健康長寿を目指しましょう、と語りかけてくる。とてもうれしい案内ではあるが、終活の入り口に立っているのですよ、と告げられた気持ちにもなった。
ともかく「後期高齢者」なる呼び方、どうもしっくりしないしありがたくもない。とはいえ、他にいい呼称があるのかと問われれば、「クローザー・パースン」くらいだが、これとて喜ばれるものではない。「健口(けんこう)で長生き」、歯科医師にかかれと命令されている感じだが、行かねばならないと素直に受け止めた。

 「オーラルフレイルのスクリーニング問診票」なる紙が同封されていた。私は、「オーラルフレイル」の意味を知らなかったので、送付先に問い合わせた。電話に出た女性も知らなかったが、ネットで調べてくれた。「歯の高齢による虚弱」だという。車でいえば、後期高齢者は大中古車、どこか悪いどころか全身が虚弱化してしまっている。でも、説明によれば、納得もする。

 硬いものが食べにくくなった。お茶や汁物でむせることがある。義歯を使用している。口の乾きが気になる。外出が少なくなった。これらの質問項目は、オーラルフレイルのリスクを調査するものだ。

 60歳で義歯を使用するようになったが、それほど私は高齢による虚弱性を意識していない。硬いものも好きだし、義歯の精巧さに感謝する日々である。

 オーラルフレイルは、将来の介護リスクを高める口のささいな衰えが積み重なった状態を言うらしいが、身体の衰えと関係があるに違いない。体力不足を実感する日々、いつも若さが欲しいとつくづく思う。

 歯科健診で病気を予防、と赤字でわざわざ封筒に書かれている。歯の状態だけではなく、口の中の衛生状態や食物を飲み込む機能などのチェックもしてくれるという。後期高齢者とは、いよいよ老人であると教えられ、幼児と同様のチェックが必要なのだと認識させられる。

 歯科健診の項目の第一は、口腔検査だ。歯・咬合(こうごう)・軟組織・口腔乾燥・歯肉の状態・口腔衛生の状態を診てくれる。次に舌・嚥下(えんげ)機能評価、接触機能評価もなされる。お年寄りは、よく餅をノドに詰まらせたり、水や物を気管に入れて誤嚥性肺炎で命を落とす。このチェックは大切、口腔検査の必要性を知る。
そして、口腔衛生指導が行われる。歯周疾患の予防、ブラッシングや食事の指導をしてくれるという。口の中のガンの発見も歯科医がしてくれるだけに、ぜひ足を運びたいものだ。3食が楽しくなければ、生きているという実感が遠のく。何でもおいしいと、元気が湧いてくる上に健康を意識することができる。

 この後期高齢者歯科健診は無料だが、75歳に達した被保険者だけに限られる。75歳以上であれば、年に1回くらいは無料健診にすべきである。

 登録歯科医療機関の一覧表も同封されていた。自分で歯科医院を選んで電話予約をすればいい。受診券と被保険者証を持参する。私は、この歯科健診を後期高齢者に限らず、希望する住民にも実施できるように各自治体は考えるべきであると思う。

 歯は大切であるにとどまらず、健康についての意識を高めることができる。ガン検診は定着したが、次に自治体は住民の「歯」についてのサービスを考える必要がある。歯が痛くなってから歯科医にかかるのでは遅い。予防と口腔チェックが大切である。義歯だけの私だが、咬合と歯肉検査で毎月歯科医にかかっている。健康の入り口である。

 
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