【地方再生・創生論 276】若い息吹が地方を変える 松浪健四郎


松浪氏

 全国の若い市長たちで「全国青年市長会」なる組織が作られている。やっぱり若いということは活力があり、私たち高齢者にも元気を与えてくれる。「老いては子に従え」「老兵は去るのみ」を「全国青年市長会」で実感した。2022年度の意見情報交換会で、私に講師依頼があり、喜んで出席させていただいた。

 毎年、全国各地でさまざまな集まりで講演を依頼されるが、私はレジメなる物を提出したことがない。話の摘要をあらかじめ伝えるためのものであるが、学問の学会発表じゃああるまいし、私はそんな物を準備せず、テーマだけを通告する。スライドを用いる講師も多いが、知識を得ることができても、感動を与えられることはない。話し下手の第1の手法は、具体的なレジメの配布とスライド・ビデオの使用である。講演は、聴衆にいかに感動を与えることができるかどうかにかかっている。

 「全国市長会」と耳にしただけで、簡単なレジメを略歴と共に提出することにした。レジメに縛られて脱線しない話ではつまらない。でも、公職に就いておられる青年とはいえ市長さんたちだから、一応の形式にこだわった。

 信じがたいほど熱心に耳を傾けて下さった。私も政治家経験者ゆえに、市長さんたちの苦労を理解することができる。「観光経済新聞」に「地方再生・創生論」を6年にわたって連載させていただいているので、私なりに地方行政の知識もある。共感を呼ぶ話があったからか、私の失敗談が面白かったのか、市長さんたちはメモを取りながら笑顔で聴いてくれる。遠方からの市長さんもいたので、昼からの会議で疲労を覚えても不思議でないのに熱心であられた。若さに勝るエネルギーはなく、新しい知識や情報を入手しようとする姿勢は立派で、私は感心ばかりさせられた。

 首長は、エネルギッシュな若手に任せた方が住民のためになる、とも痛感した。ベテランの役人が役所の各部門に在職するわけだから、新しい発想力を首長に求め、個性的で魅力的な自治体を作ってほしい。時代の進み具合は、令和に入って加速している。もう高齢者の能力では無理である。青年市長会は、ウクライナ避難民に対する支援策についても議論されていた。その内容も斬新で驚いた。

 住宅をどうするか、市営住宅を提供する。就労についてはどうするか、ハローワークの利用を考える、市内企業に協力を要請する。教育については、日本語支援を行い、市内の小中学校で受け入れる。言語については、通訳サポートとともに日本語学習支援を行う。相談窓口をどうするか、ふるさと納税の活用や寄付金を集める。コロナのワクチン接種支援を行う等、きめ細かい対策をスピードをもって行うという。戦争で苦しむウクライナの人たちに対して、行動力で人道主義を表現してこそ、先進国・日本が評価される。

 私の主張したことは、すべからく全国均一の政策ではことはうまく運ばず、地方の特色を生かすべき、そして、条例を作る権限を最大限に活用するということに尽きた。また、政府、総務省の下僕にならず、常に対等の立場にある誇りをもって対応してほしいと付け加えた。活力みなぎる地方自治体が、ホタルの光のごとく全国あちこちで光ってくれれば日本国も変わる。いや、変えていかねばこの国が腐ってしまうという危機感を感じる。

 青年市長の数は100に届かない。私たちは「地方再生・創生」のために、若い人材を首長に選ばねばならない時代を迎えていることに気付くべきだ。人生100年時代とはいえ、若いかじ取りの登用を選挙民は考える必要がある。なぜ、過疎化が進んだのか、その責任を誰が取ったのか、打つべく手を打たず、何もかも手遅れ、これが地方自治体の実態であった。若い息吹が地方を変えてくれると私は信じている。大阪府泉南市で31歳の若い市長が誕生した。大胆な政策を期待したい。もはや地方行政は、前例にとらわれず、冒険心をもって取り組まねばならない域にある。

 
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