【地方再生・創生論 275】「夜間中学」の設置を望む 松浪健四郎

  • 2022年9月10日

松浪氏

 政府や外郭団体から諸外国へ派遣されたり、一時的に雇用される場合、給料の基本は学歴である。中卒から大学院修了までの細分化と年齢等で等級や号俸が決められる。実力主義社会といえども、学歴がものをいう。私は外務省の外郭団体である「国際交流基金」(Japan Foundation)から、3年間もアフガニスタンのカブール大学に派遣されたが、その時、学歴主義を認識した。

 能力があろうがなかろうが、この国では学校へ進まないと、雇用された際に不利益を被ることもある。加えて、資格や免許も重要となるが、たいていは学歴とリンクしている。もし、高校を中退すれば、学歴は中卒となる。大学中退は高卒とされ、この国は在学年数よりも卒業証書を重視する。で、有名、無名、一流、二流関係なく、学校は卒業しないことには学歴の評価を得ることができないのだ。

 2020年の「国政調査」で、15歳以上で中学校中退を含めると、最終卒業学校が「小学校」という人が約80万人もいることが分かった。さらに小学校を中退した人も約10万人もいて、合計すれば約90万人も初等教育を受けていなかった。そのうち約3万人が外国人だというが、義務教育が徹底されていない現実に驚く。そこで文部科学省は、義務教育に挑戦できる策として、「夜間中学」の必要性を認識し、開校に向けて取り組むように都道府県や政令指定都市の教育委員会に事務連絡で要請した。

 文科省は、授業料の無償化は各政党の要望によって高校や大学で実施するようにしたが、義務教育を受ける機会を持たなかった人たちや、高校・大学の夜間(二部)の苦学生に対しては熱心に取り組まなかった。総務省が公表した20年国勢調査の「就業状態基本集計」で、義務教育を終了していない人数が判明した。約80万人の小学校卒のうち9割が80歳以上だった。戦中、戦後、なかなか学校へ通えなかった人たちが多かった事実を知る。また、70代の日本人も多く、全体の4分の3が女性だった。

 国籍別ではブラジル、中国、朝鮮半島が多いが、若い人ほど外国人が義務教育を受けていない。家庭環境もあろうが、言葉のハンディも大きい。外国人にはペナルティーがないといえど、各自治体は熱心に通学を推奨すべきである。都道府県別に見れば、青森、秋田、岩手、新潟、山形と続くが、人数では北海道が5万人を超えている。以前は、家庭教育で就学義務を代替できたに加え、戦後の国内の混乱が義務教育に多大な影響を与えた。

 文科省は、初等中等教育局長通知(21年2月)で、「夜間中学の設置・充実に向けた取組の一層の推進について依頼」した。そして国勢調査の結果を受け、22年6月1日付の事務連絡として再度、夜間中学の設置・充実を依頼した。文科省は、不登校児の増加や外国人の受け入れ拡大を目指す上でも、夜間中学の必要性、重要性を認識し、各自治体の教育委員会の尻をたたく状況にある。

 夜間中学に関する広報を幅広く行い、潜在需要の掘り起こしを各自治体に求める文科省。「夜間中学設置応援資料」を作成し、「ニーズは必ずあります」と説き、自治体の経費負担についても言及する。5年間で全ての都道府県と政令指定都市に1校以上の夜間中学の設置を目指すが、順調に進んでいない。「教育機会確保法」が16年に公布されたとはいえ、東北地方では遅れている。22年4月現在、夜間中学は全国でいまだ40校だけである。

 新しいカリキュラム、一般化している機器を用いた授業は、高齢者の生徒にとっても魅力的であろう。日本語の習得を目指す外国人の生徒が8割を占めると報告されているが、そのクラスも重要であろう。学校教育を受けることにより、日常生活のありようも変化するばかりか友達を持つこともできる。新しい知識を身に付け、視野を広げることのできる人生、生きがいを覚えるに違いない。自治体よ、「夜間中学」を学び直しのためにも設置してみてはどうか。

 (前号のコラムは毎日新聞を参考にさせていただきました)

 
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