【地方再生・創生論 271】深刻な日本の少子化 松浪健四郎


松浪氏

 男女のマイノリティーの差別撤廃や保護について、政府も各自治体も熱心である。別に悪いことではないが、もっと本気になって取り組むべき問題は、出生率の向上だ。どうすれば晩婚化を防止できるか、子どもを産んでもらえるか、最大の問題として捉えねばならない。経済の衰退にとどまらず、国家自体の衰退に直結する緊急の課題である。

 誰も被害を受けないため、少子化問題は担当大臣はいるものの店晒(たなざら)しにされてきた。放置されてきた少子化問題、対策も妙案もなく、いよいよ日本国衰退の現実味を帯びつつある。令和3年の出生率は1・3、出生数は81万1604人で過去最低であった。これは恐ろしい数字であることを認識せねばならない。

 紀元前6世紀中葉、ペルシアの予言者であるゾロアスターが、ゾロアスター教(拝火教)を創始した。聖典は「アベスタ」であるが、家庭用に「小アベスタ」がある。それを読むと、「馬に乗れ」「犬を飼え」「結婚を奨励せよ」と説いていることが理解できる。

 「馬に乗れ」ば、放牧中の羊をすぐに集められる。馬を飼うことは、銅や鉄文化が必要だ。蹄鉄(ていてつ)と馬銜(はみ)がないと馬をコントロールできない。馬文化は銅や鉄の製造を盛んにし、経済力を高めた。「犬を飼え」は、家畜を狙う狼の集団を追い払う安全保障。家畜は財産ゆえ、それを守ってくれるのは犬だった。「結婚を奨励せよ」とは、遊牧民の世界にあっては、部族の拡大こそが重要であった。そのためには人口の増加を重視し、宗教の中で子づくりを教えていた。

 この三つの教訓は、現在の私たちの社会でも通用する。が、結婚や子づくりを法律をもって奨励することができない近代社会、困ったものだ。日本にも子づくりを説く新興宗教は存在するが、一般的には晩婚化が進み歯止めがきかない。イスラム教の原理主義のアフガニスタンのタリバンは、現在も女性隔離の習慣を踏襲するが、女性の社会進出よりも家庭重視、子育て重視の政策をかたくなに厳守する。世界中から批判を浴びようとも変更しようとしないのには驚く。一夫多妻を容認するイスラム教の世界では、少子化現象は見られない。

 日本の少子化は深刻である。自治体によっては、子育て費用の支援や出産お祝い金の支出等、さまざまな知恵を繰り出しても少子化の波は大きくなるばかり。昨年の死亡者数は戦後最多の約144万人だから、1年で約63万人の人口減少、かなり大きな都市が消滅したことになる。毎年毎年、この状況が続けば全国の自治体がやがて過疎地となってしまう。

 2021年の婚姻件数は50万1116組、戦後最小となったが、コロナ禍の影響もあったにせよ、結婚を奨励する政策も求められる。自治体によっては祝金を弾む、住宅の世話をするなり優遇策を講じているが、決定打に欠ける。ゾロアスター教のごとく、結婚を勧めるだけではなく、部族集団が面倒をみるシステムを確立していたごとく、各自治体は大胆な政策を打ち出す必要があり、総務省が支援せねばならない。

 新婚5年間、10万円までの家賃を国と自治体が負担する。6年間毎月子育て補助金を1人につき3万円を出す。かかるダイナミックな支援策を国や自治体が打ち出さない限り、人口減少は解決できない。岸田内閣は、新しい資本主義政策の前に、日本国の人口を考えねばならない。

 ここまで少子化が加速し、重大な危機を迎えているにもかかわらず、政府も各自治体ものんきすぎる。3年もすれば、全国の幼稚園はガラガラとなるが、その前に保育園で閑古鳥が鳴く。わずか数年前に「保育園が足りない!」といって大騒ぎしたが、あれは主婦の社会進出と核家族化の影響であって、子どもが増加したわけではなかった。大騒ぎすべきは、ベビーブームを再来さすべく政策の提言であった。大局を誤る人気取り政治家が多くて、日本は衰退の方向にある。国家の安全保障並みの予算で、出生者数を増加させないと大変なことになる。

 
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