【地方再生・創生論 250】「尾道方式」が膵臓がん患者を救う 松浪健四郎

  • 2022年3月3日

松浪氏

 コロナ禍は、がん検診をにぶらせたために医療費支出を低下させた。毎年、100万人のがん患者を発見してきたのに、コロナ禍に邪魔されたようだ。死亡数の最も多いがんは、早期発見によって治癒するまで医学が進化しているゆえ、検診こそが大切なのに、私たちの意識はコロナ禍に支配されてきた。日本人の悪癖は、一つの問題が起こると同方向に走ってしまい、他の重要な問題を忘れてしまうことだ。がん検診も忘れてしまった。

 早期発見こそが大切なため、がん検診をパスさせてはならない。特に無症状の初期に発見しないことには、命を取られてしまう「膵臓(すいぞう)がん」は患者の意識と行動によって救われる。かく書く筆者は、悪性リンパ腫の治療を受けている際、超音波検査によって膵臓がんを発見してもらった。糖尿病の治療も受けていた上に、ヘビースモーカーだったので膵臓がんの可能性が高いと医師たちが疑った。で、やっぱり膵臓がんであった。糖尿病患者は、日本人に多い。膵臓と糖尿病が関係深いだけに、超音波検査が大切である。

 膵臓がんは、生活習慣や生活環境によって招来される。糖尿病も同根である。このがんの横綱である膵臓がんは、症状が出てからではステージが進んでおり手術できない場合が多いという。私の膵臓がんは、ステージ2だったが、手術には9時間を必要とした。それでも、手術できたのは幸運だったといわれた。術後5年間の平均寿命の膵臓がん、医師の指導によって糖尿病の治療を受けながら投薬中である。肥満であったり、慢性膵炎や糖尿病であれば、合併疾患として膵臓がんを誕生させる。これらの危険因子を除外せねばならない。

 神奈川新聞の報道によれば、瀬戸内の港町、広島県尾道市で生まれた膵臓がんの早期発見プロジェクトが全国に広がっているという。この「尾道方式」が、膵臓がんの患者を救ってくれるようだ。早期発見であれば、治癒は可能とし、検査用の超音波内視鏡の普及と抗がん剤と手術、放射線を組み合わせた集学治療が進んでいて、治療成績も向上しているのだ。術後の生存率が3年だったのに、昨今では5年まで伸びた。それだけに、早期発見が鍵となる。自治体や企業、組織のがん検診の重要性を容易に理解できるが、超音波検査の実施を積極的に行うように徹底しなければならない。

 「尾道プロジェクト」は、膵臓がんの危険因子を複数持つ人に、地域の連携医療機関が体外式の超音波検査を行う。異常所見を認めれば、尾道総合病院で詳しく調べる。この方式で1万8500人が精密検査を受け、610人ががんと判明し、290人が手術を受けたという。その結果、尾道市での生存率が大きく伸びたのである。プロジェクト効果といえそうだ。

 自治体は、住民たちに膵臓がんの主要な危険因子を広報する必要がある。まず、「家族歴」。家族に膵臓がん患者がいたか、いなかったか。「遺伝性疾患」。膵炎だけでなく、身内にがん患者がいたか、どうか。「合併疾患」は、前述した糖尿病や肥満だ。「生活習慣」は喫煙と飲酒。1日に日本酒を3合以上飲めばリスクが高まる。これらの危険因子を知識として持てば、検診に参加する人が増える。「無症状のうちに発見」を合言葉にしよう。

 私は術後3週間で退院した。飲酒も喫煙もせず、優等生ぶりを発揮しているが、もっと早く危険因子の恐怖を認識しておくべきだったと反省する。膵臓がんは、がんの王様で最も生存率の低いがんだけに早期発見以外に手はない。その意味で私はラッキーであった。どの自治体も「尾道プロジェクト」を研究してほしい。もちろん、膵臓がんだけにとどまらず、他のがんの発見も大切だが、なかなか生存率を高めることができない膵臓がんには注意せねばならない。

 糖尿病は、膵臓がんの予備軍と決め込み、患者は検診をこまめに受診しなければならない。「なぜ、あんなにタバコを吸ったのか、甘党で砂糖をコーヒーに入れてなぜ飲んだのか」、膵臓がんになるべくしてなったと反省する。

 
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