【地方再生・創生論 243】自治体に求められるもの 松浪健四郎


松浪氏

 アフガニスタンの混乱が続く。メディアはタリバンの統治、特にイスラム原理主義による女性の人権問題等と対立するイスラム国ホラサン国(ISK)のテロ攻撃を熱心に報じるが、具体的な国民生活については教えてくれない。政権が変われば、国民の暮らしが気にかかる。最も大切な国家目標は、「平和で国民が安心して生活できる」ことなのに、それらの報道がない。

 まず、砂漠の国なので「生活水」が大丈夫なのかと心配する。農業用水、生活用水の確保が重要である。この国には、灌漑(かんがい)大臣なるポストがあり、水の分配が地域問題の主役だ。わが国のどこにも水利組合があって、農業を営む上で「我田引水」を認めるわけにはいかない。アフガンでは、雨が降らないだけにヒンズークッシュ山脈の雪解け水が支えとなっている。河川の管理こそが民主的、平等でないと農業が崩壊してしまう。

 2020年9月、アフガン支援を30年以上も続けられてきた中村哲医師は、食糧生産こそが命を救うと考えられ、砂漠の地を耕作地に転じさせる援助を行ってきたが、悲しいことに銃弾で倒れた。10数年前、中村医師の助手として貢献された静岡県出身の若者も銃弾で命を落とされた。住民のためにボランティア活動を展開していた日本人は、なぜ命を奪われたのか。歴史的に水の分配が決まっているのに、横取りと映れば反感を買う。つまり、公共事業は、外国人のボランティアでは難しい問題となる教訓であろう。

 各地の河川にあるダムは、心配いらないのだろうか。ヒンズークッシュ山脈の氷河が突然、解ければ洪水が起こる。そのためにダムがあり、発電所が機能する。水力発電所の詳細を記述する紙幅を持たないが、アフガン国内の電力のほとんどが水力発電所のおかげである。そのメンテナンスや部品は大丈夫だろうか。技術者は、トンズラせずに駐留しているのだろうか。和歌山の紀の川にかかる水道管が水没、古くなって断水した。専門家が不在だと、先進国が援助してくれた各施設が水泡に帰す恐れがある。それでなくとも停電の多い国だっただけに、国民生活が心配である。

 水と電気の必要性は説くまでもないが、医療面の心配が大きい。医師の存在もさることながら、医薬品の供給が気にかかる。医薬分業の徹底した国だけに、流通がうまく機能しているのだろうか。地方には病院もなく、医師不足は慢性的だけに病人が出ればアウト。イスラム教は、死体解剖を禁止している。ましてや、原理主義のタリバンの手にかかれば、医学部では偶像崇拝禁止によって解剖できずに医師になる可能性がある。さらに医療の先進的な機械の管理も困難であろう。JICA(国際協力機構)は、さまざまな品々を援助してきたが、一度でも壊れてしまうと埃をかぶるのが常だった。

 首都カブールに難民が押し寄せている。心配はゴミの処理だ。役所に役人がいて、平常通りに役人が動いておればともかく、給料を払える金を持たないタリバン政権の下では、役人は簡単に仕事を捨ててしまう。アフガン人の性格を知る私には予想できる。首都がゴミの都になる可能性がある。ゴミを家畜が食い、家畜のフンだらけになるとも思われる。

 政治の最大のテーマは、「人が安心して安全に暮らせる」ことである。次にその人々の心に文化によって潤いを与えること。読み書き算ができて、相手の立場に立てる人間性を涵養(かんよう)すること。そして、人々が元気で健康であること。これらのテーマをタリバンが理解していないかに見える。権力奪取後の運営について、考えていなかったのか、まだまだ混乱が続く。

 明治維新を想起する。政権に求められるのは人材だ。それは自治体も同様である。首長の政策を実行するには、三人寄れば文殊の知恵、内部昇格や外部からの起用を考えるべきである。タリバンは軍事力を誇ったが、政権運営のための人材が不在。鳩山・菅両氏の旧民主党政治を想起するが、主役が国民であることを忘れている現実を悲しむ。

 
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