【地方再生・創生論 229】悲劇の国アフガニスタン 松浪健四郎

  • 2021年9月18日

松浪氏

 アフガニスタンが大変だ。イスラム原理主義勢力のタリバンが、全土を制圧した。もう自由がなくなると決め込んだのか、外国へ逃げようとする人たちが多い。こんな不幸なことがあるだろうか、己の母国を捨てようとする国民の多さに驚かされる。イスラム原理主義の国では窒息してしまう、その理解が多くの難民を生む。気の毒な国民たちである。

 私は、このアフガンに3年間も暮らし、この国について4冊の著書がある。このほど、アフガン問題がかまびすしくなったからか、処女作「アフガン褐色の日々」(中公文庫)が再版された。平和だった美しいシルクロードの国を活写したつもりだったが、まさか悲劇の国に転じるなんて想像外、悲しすぎる。日本は、アメリカに次いで援助をしてきた2番目のドナー国だ。新政府樹立に際し、コミットすべきだと考えるが、静観とは寂しい。

 アメリカの顔をながめている印象を受けるが、アメリカは軍を派遣して戦った国で日本とは状況が異なる。私たちの国民性なのだろうか、独自路線を歩むことがない。また、日本とアフガンの関係の歴史は、アメリカのそれとは違うのだ。東京裁判の際、アフガンは日本の味方をしてくれた。1973年、当時の皇太子殿下ご夫妻(上皇陛下ご夫妻)がアフガンをご訪問され、バーミヤンの大仏を見物された。皇族とアフガンの関係は深かった。

 1年前、医師の中村哲さんが、東部のクナール川のかんがい支援のボランティア活動を永年行っていたが銃弾に倒れた。公共事業に個人が参加する難しさを教えられたが、水の分配のうるさい砂漠の国だ。水に恵まれる日本の各地にも水利組合があり、稲作をする日本でもデリケートな問題である。

 東南アジアの国々で、日本の青年たちがボランティアで井戸を掘って住民たちに喜ばれている報道によく接する。が、砂漠の国で井戸掘りをすると、それはカレーズ(地下水脈)の水を横取りすることになり、反感を買う。下流の人たちに水が行かなくなってしまうからだ。10数年前、中村哲医師と共にボランティア活動をしていた静岡県の青年も凶弾に倒れたが、原因は井戸掘りだとささやかれた。風土を学んで、知識を持たねばボランティアで命を落とすことを教えられた。

 アフガンと国境を接するパキスタンやイランには、難民と化したアフガン人が押しかけるに違いない。パキスタンへは、イスラム教のスンニー派の人たちが逃れ、イランにはシーア派の人たちが行く。民族も異なれば宗派も異なる。私たちの親切心は、表面上の報道から出発しているかに映るが、ボランティアを行うにしてもよく研究してからでなければならない。特にイスラム教の戒律が厳しいからである。

 数年前、ジャーナリストを名乗る日本人が、アフガンの地方都市で誘拐された。政府は身代金を払って解放されるという事件があった。渡航禁止の国であっても、入国する日本人は後を絶たない。好奇心が旺盛なのか、功名心に走るのか、命知らずの若者が多数いる。政権が安定していない国への渡航は危険、しかも日本大使館が閉鎖されているので助けてくれる人もいない。無謀な計画を立てる人たちをいさめてほしい。危険なのはアフガンだけではない。シリア、ミャンマー、イエメン、中国東部等、日本人の感性では通じない国や地域が多数あって、ボランティアを受け入れない。

 私たち日本人は、阪神・淡路大震災以来、ボランティア活動が常識となり、大きく貢献してきた。市井の人々の善良な精神こそが日本人の底力であるが、その延長線上に困っている諸外国がある。日本政府もアフガン国内では、ボランティア団体の協力を得て援助をしてきたが、ついに自衛隊機などで帰国した。

 虎視眈々(たんたん)と私もアフガンへの渡航をうかがっているが自重している。日本政府は何をすべきか、日本人はどうすればいいのか、これらを調査したいが許されない。平和であれば、アフガンほどの観光資源の多い国はない。

 
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