【地方再生・創生論 213】太陽光パネルをめぐるトラブル 日体大理事長 松浪健四郎

  • 2021年5月21日

 私の趣味はサボテン栽培である。もともと砂漠の植物だから、温度や日照時間、天候が気にかかる。いいサボテン農家は、意外にも長野県に多い。1年間を通じて、長野県や山梨県は、日照時間が長いのだ。温度は温室や油と電気を用いて調節できるが、日照時間や天候だけはどうにもならない。

 山梨県北杜市は、都会人が一番魅力を感じ、移り住みたい地として有名だ。景観が都会人からすれば、手の内に大自然を入れた感じで住みたいと思うらしい。北杜市も日照時間の長い地であるのだが、移り住んだ人たちや元からの住民を苦しめる問題がある。規制がゆるやかであった時代から、あちこちに太陽光パネルが敷設され、景観を失う現実に直面しているのだ。

 急速に再生エネルギー発電のための太陽光パネルが普及し、使いみちのない傾斜地までも借りてくれるゆえ、瞬く間にパネル村が誕生した。自治体に届け出するだけで、パネルを敷設することが容易にできたのだ。むしろ、利用価値のない土地を使ってもらえることは、その地域の活性化につながるとも考えられた。事業者は、借地として安い土地を当然ながら地方に求めた。太陽光パネルの産み出す電気は、電力会社が「固定価格買い取り制度(FIT)」で売ることができ、事業として成り立つ。

 ところが、地方の森林の所有者たちは、土地を借りてもらえると知ると、森林の伐採が進む。これでは景観が悪化するばかりか、豪雨などによって周辺が危険にさらされることとなる。で、パネル設置者と住民の対立が日常のものとなり、各自治体も頭を抱える。自治体によっては、多発するトラブルを増やさないために、条例を定めた。が、その条例もあまり役に立たず、さらに厳しい条例を制定する必要性が生じ、すでに138の自治体が施行している。再生可能エネルギー発電という近代的なイメージは、住民を苦しめているのだ。

 条例の中味は各自治体によって異なる。トラブル防止のためには、他の自治体と同じでは防げない。各自治体によって環境も状況も規模も違うため、条例内容は多岐にわたる。例えば、「太陽光パネル設置禁止区域の指定」をしたり、「首長の同意・許可取得」を条件に加えたり、「住民への事前説明」を義務付ける自治体もある。さらに「廃棄費用の積立金の義務化」を求める自治体もある。

 時代の流れは、再生可能エネルギー発電とはいえ、住民の反発が全国で起こり、環境省も動かざるを得なくなった。そこで、2022年度にも改正案を成立させて新制度をスタートさせようとしている。新制度とは、全国どこでも容易に太陽光パネルを設置して、発電事業を行えないようにしている印象を受けると同時に、事業者と地元住民のトラブルを避けて健全な形で発電事業をさせようとするものだ。トラブルは、地域によって異なるが、上記の条例案をほぼ踏襲していると私は受け取っている。日本の誇る「ふるさと」や「里山」を失ってはならないのは言をまつまでもない。

 新制度の流れを要約してみると、まず、自治体が再エネの促進区域を設定する。自治体の義務であり、景観や騒音を心配する上に住民の雇用をも促進させようとしている。加えて、災害時には、電力の供給も視野に入れている。区域設定は重要であろう。次に事前に協議会を発足させることにしている。国、県、自治体、住民および事業者で計画について協議することを求めている。時間がかかりそうだが、事業者の説明次第であろうか。

 協議会で合意を得た事業者は、計画を自治体に申請し、認定を得てから取りかかる仕組みらしい。太陽光パネルによるトラブルが、あまりにも全国的に生じ、国も動かざるを得なかったのだ。遅きに失した感もあるが、FITの価格も低下したがパネル自体も中国や韓国製は安価で採算がとれるので法の改正も必要であった。「地球温暖化対策推進法」は、風力や地熱、水力発電が重視されるようになるため、包括的な改正がさらに求められようか。

     
 
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