【地方再生・創生論 207】役所内に「外国人課」の設置を 日体大理事長 松浪健四郎

  • 2021年4月1日

松浪氏

 代議士をしていた頃、あちこちの知人の企業から陳情を受けた。「外国人技能実習生が逃げた」という問題が多かった。中国人実習生が多かったが、給料の高い会社への移籍というより、中国人ブローカーが中に入っての引き抜きが横行していたのだ。

 が、近年の技能実習生の問題は、ベトナム人に集中している。日本社会は、すでに外国人労働者なしには立ち行かず、人口減少を補うだけではなく社会保障の面においても影響力を与えている。菅義偉首相が、最初の訪問国をベトナムにして両国関係の深化を目指したのは、まず技能実習生の供給、次に日本企業の進出問題があったといえる。

 日本政府は、ハノイに「アジアのハーバード大学」を標榜(ひょうぼう)して5年前に“日本ベトナム大学”(日越大学)を設立させ、大学院教育からスタートを切った。ベトナム政府と日本は距離を縮め、友好関係にある。で、すでにベトナム人は日本国内に28万人が生活する。そのベトナムからの実習生が、昨年、さまざまな問題で新聞の社会面を飾った。コロナ禍の状況下での悲しい物語であった。

 関東地方で豚や子牛の家畜窃盗事件が次々に起こった。コロナ禍で仕事を失ったベトナム人たちが、その肉をグループで売買することで逮捕された。日本人の発想では考えられない窃盗事件、実習生たちが追い込まれている実態を浮き彫りにした。

 また、10月にNHKのETV特集で放送された番組は、コロナ禍で仕事をなくしたベトナム人女性の実習生の悲しい物語であった。夜の川で彼女たちが食用のためにカエルを取る姿であった。生活がいかに苦しいか、いかに追いつめられているかを物語っていた。

 国連から人権侵害であると勧告を受けてきた日本、技能実習生を巡る問題は多岐にわたる。賃金未払い、不当な解雇と悪い労働条件、これらのトラブルが国連にまで届いているのだ。日本側の雇用者は、実習生に対して奴隷的な扱いをしていないか、見直しを進めて実習生が笑顔で技術移転のために活躍できるように環境の整備を進めねばならない。少なくとも日本人と同等の賃金を与えるべきだ。

 ベトナムの都市で日本企業が日本語学校を作り、日本へ技能実習生として送り出す。が、悪質なブローカーが暗躍し、実習生から高額の金を受け取るため、実習生が来日して仕事にありつけたとしても生活は苦しい。加えて低賃金では、夢ある日本ではなくなってしまう。それゆえ、日本は途上国の人たちからも敬遠されている現状を理解せねばならない。

 すでに全国の各自治体で外国人が生活をしている。果たして自治体は、その外国人の人たちの暮らしぶりを把握しているだろうか。外国人は国民性も文化も異なる異郷で生活をするのは、想像できぬほど不安である。そのために自治体は役立っているのだろうか。

 本来、制度が適正に実施されているか国が監督すべきだが、地方の各自治体が住民たる実習生や他の外国人の状況を干渉するのではなく、困っていないかどうかの調査を密にして不幸を招来させないように協力すべきである。役所内に外国人課なる専門の部署を設置すべきである。政府は、すでに移民政策にかじを切ったのだ。

 過疎化の進む地方自治体にあっては、実習生や外国人を大切にする必要がある。住民1人は、年間平均約150万円を地元に落とすとされるゆえ、住民を増やすことを考えねばならない。異なる言語と文化、いかに相互の理解を深めることができるか、その接着剤的役割を自治体がせねば、外国人たちは孤立してしまう。ベトナム人たちの犯罪は、追い込まれた気の毒な生活のためだった。相談できる人が不在だったことを各自治体は認識すべきである。

 日本の評判が悪くなれば、技能実習生の希望者もいなくなる。この制度に目を閉じたままの自治体が多すぎる。積極的に企業の協力を得て外国人へのサービスを盛んにしてほしい。彼らが日本経済を支えてくれているのだ。

 
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