【地域創生と観光ビジネス74】近鉄グループで春を堪能 「志摩観光ホテル」「箱根高原ホテル」 淑徳大学経営学部観光経営学科学部長・教授 千葉千枝子


 三度目の正直で今春、吉野山の桜をやっと愛でることができた。一昨年は散り終わった葉桜で、昨年は固い蕾(つぼみ)の枯れ山だったことは本紙でも述べた。それが今年は見ごとに開花した枝垂桜を、投宿先「芳雲館」の窓外に望むことができて感無量。山全体がピンク色に染まるには、まだ時間がかかりそうだったが、これまでをおもえば上々の景色である。

 金峯山寺蔵王堂では、闇夜に浮かんで神秘的な蔵王権現を拝む機会にも恵まれた。吉野山旅館組合が宿泊者限定で夜間特別拝観を実施していたのだ。夕食後に宿の当主が自ら案内してくれた。昼間の参拝とは違った厳かさに、身が清められた想いがした。

 吉野を堪能したあとは賢島へと移動。旅のクライマックスは、「志摩観光ホテル ザ クラシック」である。ここでも桜が迎えてくれた。最大のお目当ては、仏料理レストラン「ラ・メール ザ クラシック」でのアワビのステーキだ。エビ・アレルギーなので定番の伊勢エビを避けて、「うにボンファム キャビア添え」やアワビのスープ、松阪牛など美食の数々をアラカルトでオーダーした。

 翌朝は、宿泊者無料の館内見学ツアーに参加した。「G7伊勢志摩サミット2016」を記録・展示するサミットギャラリーで集合してツアーがスタート。山崎豊子さんの人気小説「華麗なる一族」がつづられた執務机や、”賢”島に反して命名された茶室「愚庵」、藤田嗣治の名画などを、ホテルスタッフが丁寧に説明しながら約40分で案内してくれた。最後は英虞湾が一望できる庭園で、サミットさながらの記念撮影を。これまた満足度が高かった。

 JWTC日本旅行業女性の会の副会長時代、JATA日本旅行業協会の当時の会長に自作の企画書をもって相談にあがり、両団体共催の勉強会をスタートさせた。講師キャスティングから司会、記事起こしまでを筆者が担い、受付や懇親会は広報戦略部の仲間たちに助けてもらった。メンバーが変わった今もタスキをつないでもらっている。

 その第3回勉強会(14年)で登壇いただいたKNT―CTホールディングス・吉川勝久代表取締役会長(当時)の講話が、今も心に残る。「世界のさまざまな事象や変化を事業対象・領域にしてしまう。そのような業界は類をみません」。鉄道業生え抜きの吉川氏が、旅行業に転じたときの印象を語られた。言い得て妙である。

 コロナ禍を経験して大手旅行会社では、公務重視や脱・旅行代理店宣言がみられた。旅行業は装置産業ではないから強くもあり、また、弱くもある。

 さて、賢島から帰京して3日後、入学したての新1年生105人を引率して、春の箱根路を訪ねた。宿泊先は近鉄グループの「箱根高原ホテル」。桜のトンネルの先で、代表取締役社長の山口滋氏が笑顔で出迎えてくれた。学生のワークにちょうどよい体育館や研修室があり、自家源泉の大浴場は湯量も豊富で身体の芯から温まる。あらためて、近鉄グループの持てる資産の層の厚さに舌を巻いた。

 かつて「野武士」と言われた集団が、鉄道業の強みも生かして旅を売る。千葉ゼミ所属の教え子が今春、クラブツーリズムに入社した。栄えあるグループの一員として頑張ってほしい。

 (淑徳大学経営学部観光経営学科学部長・教授 千葉千枝子)


(観光経済新聞25年4月21日号掲載コラム)

 
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