タイの首都バンコクの商業施設「セントラル・ワールド」を会場に、去る5月18、19日の2日間、「日本東北観光フェア2024」が開催された。昨年度に引き続いて2回目の開催となる、東北誘客のためのタイ旅行博だ。
オープニングセレモニーでは、主催する東北観光推進機構の松木茂会長が開会のあいさつを、そして仙台市商工会議所会頭で百貨店「藤崎」代表の藤崎三郎助氏がタイからの東北来訪を呼び掛けた。
また、タイ国政府観光庁副総裁のチャッタン・クンチョーン・ナ・アユタヤ氏が歓迎の辞を述べると、大きな拍手で会場が沸いた。通訳は同庁の鹿野健太郎氏。私ごとだが、ゆうに50回は数えただろうファムツアーや学生インターンシップで世話になった鹿野氏と再会できるのが今回の一番の楽しみだった。コロナ禍を経て、元気で再会できたことが何よりだ。澱(よど)みない通訳ぶりで、あらためて感心させられた。
施設中央にしつらえたステージでは、「盛岡さんさ踊り」が披露され、仙台・宮城のキャラクター「むすび丸」や福島の「キビタン」が手を振って笑みを誘う。花巻市の上田東一市長はじめ各県の観光関係者らが集い、タイからの誘客に意気込みをみせた。筆者が委員を務める「いわて観光立県推進会議」を統括する岩手県庁の観光・プロモーション室・髙橋利明室長のお姿も。ふるさと岩手が頑張っているのも誇らしく感じた。
出展ゾーンには、東北経済をけん引する企業や団体、連携自治体が20超ものブースを構え、タイ語のパンフレットやギブアウェイを用意して来訪を呼び掛けた。巨大な秋田犬のモニュメントが来場者を出迎える。多くのタイ人が会場を埋め尽くし、熱気にあふれた。
コロナ禍の20年に経営破綻したTG タイ国際航空について、在タイ王国日本国大使館の一等書記官・山川剛志氏に尋ねたところ、「日本便などの国際路線が好調なうえ、組織や保有機材の合理化で再建に努めてきた。ナローボディ機など新機材の発注も進む。力強い回復で、再建は近く完了するだろう」と語った。
せっかくなので関係者の皆さまとレストラン「ソンブーン・シーフード」で人気のプーパッポンカリーを囲んだ。山川書記官ご推薦のタイの名店で鹿野氏が予約を入れてくれた。東北観光推進機構の松木会長と紺野純一理事長にはこの場を借りて深く御礼申し上げたい。紺野氏に今回の利用航空会社を尋ねたら、「訪問国に敬意を払いTGで」という返答が。というのも今回は、JATAや関係者らとともにTG本社を訪問して、仙台・バンコク直行便再開を要請されたのだそう。本気度が違う。
久しぶりのタイでは束の間の観光も楽しんだ。メークローン鉄道市場やダムヌンサドゥアック水上マーケットを旅仲間のエストゥーエスデザインの皆さんと巡った。それが、どこも大勢の観光客でにぎわっていたが日本人の姿はない。中国からのツアーが爆発的に多く、欧州や中東、アフリカ、ロシアからの観光客もみられた。
タイからの誘客に、双方向交流は欠かせない。かつて1バーツが2~3円だったものが今では4円超。だが欧米の物価に比べれば、タイはまだまだ安く旅することができる。まずはタイへと旅することが訪日誘客の近道と言えよう。
(淑徳大学 学長特別補佐・経営学部学部長・教授 千葉千枝子)