【口福のおすそわけ 463】金華豚! 竹内美樹


 先日、知人から「金華ハム」をいただいた。中国料理店で「金華ハムのスープ」や「金華ハム入りチャーハン」などを食べたことはあるけど、詳しくは知らないので、調べてみることに。中国語で「金華火腿」と書くそうだが、切ると断面が炎のように赤いことから、その名が付いたのだとか。

 それを名乗れるのは、中国浙江省金華市で作られた物のみ。2001年中国政府に地理表示保護産品に指定され、08年にはその製法が国家級非物質文化遺産に指定されたそうだ。モチロン原料も、頭とお尻部分だけが黒い「両頭烏(リャントンウー)」という品種の豚の骨付き後ろ脚の腿と定められている。その色から熊猫猪(パンダ豚)とも呼ばれるが、通称は金華豚だ。小型で肉量が少ない上、成長が遅いのでコスパが悪く、他の地域ではあまり飼育されていないらしい。それ故、幻の豚といわれている。

 穀物は一切与えず、野菜や茶殻などを食べさせているため脂肪が少ない。後ろ脚しか使わない理由は、前脚より脂肪が少なく、タンパク質が豊富でアミノ酸含有量が多いから。仕込みは冬に行う。1~2カ月かけて何度も塩を擦り込み塩漬けに。次に表面を洗い、屋外で吊るし約2週間天日干し。その後、棚に並べ、時々上下を返しながら発酵・熟成させる。その期間、最低でも1年以上だそう。時間も手間も掛かるのだ。

 古くは唐の時代、すでに金華地方で豚肉の塩漬けが作られていたという記録があるらしい。後に戦場で携行保存食として重宝され、朝廷への献上品にも使われたそうだ。1915年サンフランシスコ万博で食品部門一等を獲得し、世界に広まったという。今やイタリアの「プロシュート・ディ・パルマ」やスペインの「ハモン・セラーノ」と並ぶ、世界三大ハムの一つだ。

 金華ハムはそのまま食すのでなく、うま味を生かして料理に使う。特に、高湯(カオタン)・上湯(シャンタン)と呼ばれる中国の高級スープには欠かせない。かびを付けて水分を抜き、発酵させうま味を増す製法も、だしという用途も、まさに中国のかつお節と言えよう。

 話を戻そう。いただいた金華ハム、レシピをググってスープ作りに挑戦! 真空パックから取り出し、指示通り4ミリ幅程度に切ろう…としたが、超硬い。中華包丁に全体重をかけてやっと切れた。水に漬け塩抜きした後、ネギとショウガと共にお鍋に投入! 原木ハムを輪切りにした骨付きだったが、骨ごとぶち込んだ。

 丁寧にアクを取りながらコトコト煮込んだら、出来上がり♪ そのお味は?…何と、しょっぱいじゃないか! レシピより長く1時間も塩抜きしたのに、ガックリ。塩分強めとは聞いていたが、ここまでとは…。そして、出がらしのはずのハムはホロホロに軟らかく、うま味もしっかり残っていた。恐るべし、金華ハム!

 いったんゆでこぼすべきだったとか、反省点も多かったが、薄めたら美味なスープになってホッとした。貴重な体験をさせてくれた金華ハムと、口福の贈り主に、謝謝(ありがとう)♪

 ※宿泊料飲施設ジャーナリスト。数多くの取材経験を生かし、旅館・ホテル、レストランのプロデュースやメニュー開発、ホスピタリティ研修なども手掛ける。

 
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