わが家は人数が多いので、食材のストックもそれなりに必要…というワケで、キッチンには大型冷蔵庫が二つ並んでいる。時々、入れたハズの物が行方不明になることも。誰かが新たに何かを入れようとして、邪魔な物を別の場所に移動させたりするからだ。
探し物がなかなか見つからない時もあれば、逆に「こんな物あったんだ!ラッキー♪」なんて時も。今朝もそうだった。白いビニール袋に、何やら紙に包まれた丸い物が入っている。取り出してみると、新玉ネギじゃないか! GW終盤に頂いた新玉ネギ、冷蔵でも10日程度といわれる保存期間をとっくに過ぎているのに新鮮! 奇跡的だ。
この新玉ネギは、以前にもご紹介させていただいた、香川県観音寺市、森川さん宅の家庭菜園で採れた物。森川氏は、筆者のボスの学生時代からの親友。毎年春に7~8名でお邪魔して、財田町(ざいたちょう)のタケノコ名人のタケノコを仕込んで缶詰にしていた。その作業場所を貸して下さっていたのが森川氏。3日間で約3トンのタケノコと格闘するわれわれの一番のご褒美が、最終日の帰京前、森川家でお食事をごちそうになること。奥さまはもちろん、偶然にも筆者と同じ名前のお嬢さん美樹ちゃんも、ムチャクチャお料理上手。その上、新鮮な食材ばかりだから、いつもとっても楽しみだった。
コロナ以降、このタケノコ合宿に行けなくなり、また来年ぐらいから復活させようか?なんて話をしていた矢先、残念なことに森川氏が亡くなられてしまった。訃報を聞いた時は涙が止まらなかった。いつも気にかけていただき、筆者の好物と知って、生きた蝦蛄(シャコ)を最終日に取り寄せておいて下さったり…思い出は尽きない。
この新玉ネギもそうだ。一緒に収穫させていただいたこともあった。採れたての新玉ネギを切っただけで食してみると水にさらしていないのに辛味がなく、ジューシーで甘味タップリ。「天ぷらも旨(ウマ)いよ」と森川氏がひと言、スグ美樹ちゃんがそれに薄衣をつけて揚げて下さった。より甘味が増して、味わい深かった。
そして、今回頂いた新玉ネギは、森川氏が種をまいた、最後の玉ネギとなってしまった。送り主も森川氏ご自身ではなく、奥さまのお名前に変わっていた。その大切な新玉ネギを切っていたら涙があふれてきた。硫化アリルのせいじゃない。
使い切ったと思っていた、その特別な新玉ネギが見つかったのだ。さぁ、どうやって食べよう? 薄切りにしてポン酢をかけるだけでもいいけど、マヨチーズ焼きにしようかな? コレはテレビの受け売りだが、半分に切った新玉ネギをオーブンで焼き、いったん取り出してマヨネーズとチーズをかけ、焦げ目が付くまで焼くのだ。ナイフを入れるとジュワッと汁があふれ出すのは、新玉ならでは。見た目ボリューミーだが、ペロリと食べられちゃう。
いずれにせよ、故人をしのび、感謝しつつ頂こう。これからもずっと、新玉ネギを見るたび森川氏の笑顔を思い出すだろう。森川さん、ありがとうございました!
※宿泊料飲施設ジャーナリスト。数多くの取材経験を生かし、旅館・ホテル、レストランのプロデュースやメニュー開発、ホスピタリティ研修なども手掛ける。