今、WBC日本代表「侍ジャパン」フィーバーに沸く、キャンプ地宮崎。「ひなたサンマリンスタジアム宮崎」は読売巨人軍のキャンプ地としても有名。コロナ前は、食材の仕入れに年に数回、同地を訪れていた筆者。以前、2軍キャンプ中だからと市内在住のご夫妻がご案内くださり、駐車場でジャイアンツのロゴ入りバスを発見! 選手が乗っていたワケでもないのに、バスと記念撮影をした記憶が。割とミーハーだ。
現在、スタジアムの場外に「SAMURAI PARK」なるスペースが設置されているそうだ。飲食エリアでは、宮崎の代表的なグルメやお土産を楽しめるという。宮崎のご当地グルメといえば、宮崎牛や地鶏炭火焼、肉巻きおにぎりや日南海岸の伊勢エビ、完熟マンゴー「太陽のタマゴ」、日向夏など、挙げたらキリがない。中でも人気なのが「チキン南蛮」だ。衣を付けて揚げた鶏肉を甘酢ダレに浸し、タルタルソースを添える。
先日、前述の宮崎在住のご夫妻から、荷物が届いた。奥様が、弟さんの経営するお惣菜店を手伝われているので、時折チキン南蛮を送ってくださるのだ。やったぁ~♪ 早速いただくことに。
揚げた鶏肉が、甘酢ダレと共に真空パックに入っていて、湯煎で温めるだけで美味なチキン南蛮を食せるのだから有難い。しかも、タレ瓶入りの甘酢の追いダレ付きなのが、タレだく好きの筆者にはうれしい。モチロン、小袋入りのタルタルソースも付いている。
実はこのタルタルソース、本場宮崎には、付ける派と付けない派の両タイプがある。ルーツは、昭和30年代初めごろ、発祥の地とされる宮崎県延岡市にあった洋食店「ロンドン」。鶏は丸一羽で仕入れてさばかねばならず、モモ肉はジューシーだが、胸肉は火を通すとパサつきやすく、どうしても余ってしまう。おいしく食べる方法はないかと研究を重ねてできたのが、賄い料理の「鶏唐揚げ甘酢がけ」。同店で修業し、後にこの料理を商品化したシェフが2人いたのだ。
故・後藤直氏が延岡市にオープンさせた居酒屋「直ちゃん」では、ストレートに甘酢のみ。一方、宮崎市で「味のおぐら」を開業した故・甲斐義光氏は、タルタルソースをかけたスタイルを開発。どちらもそれぞれの元祖といわれる。
基本は胸肉だが、最近、モモ肉を使う人も多いらしい。筆者が頂いたのもモモ肉だ。作ってくださった知子さんに伺ったところ、「スグ召し上がるレストランと違って、お惣菜として販売すると、胸肉は冷めて硬くなっちゃうのよ」と。肉に粉をまぶしてから卵液につけて揚げるそうで、そうすると、甘酢ダレがよく絡むという。ちなみに「南蛮」とは、戦国時代の南蛮貿易でもたらされた唐辛子や、油で揚げる調理法のこと。
延岡市では、チキン南蛮を普及させる団体が2009年に結成され、7月8日を「チキン南蛮の日」と定め、町おこしに役立てている。そのかいあって、今や全国区の人気者チキン南蛮。地元を背負って、頑張れ!
※宿泊料飲施設ジャーナリスト。数多くの取材経験を生かし、旅館・ホテル、レストランのプロデュースやメニュー開発、ホスピタリティ研修なども手掛ける。