
竹内氏
蟹(かに)好きの筆者、このシリーズでたくさんの蟹について書いてきた。兵庫県が誇る「津居山蟹」に始まり、越前、加能、若松葉、竹崎など、国内各地のブランド蟹。種類もさまざま。花咲蟹、アブラガニ、タラバガニ、毛蟹、黄金蟹、ドウマンガニ、親ガニ(セイコガニ)、高足蟹、ワタリガニ(ガザミ)など。さらに、海外遠征も。中国の上海蟹、シアトルのダンジネス・クラブ、バンコクのマッドクラブとブルークラブ、サンタバーバラで食したストーン・クラブ、フィッシャーマンズ・ワーフのダンジネス・クラブ。
そして、蟹料理についても書かせていただいた。シンガポールのチリクラブやペッパークラブ、クラブ・ビーフン。ベトナムの屋台のような店のソフトシェルクラブの唐揚げや、マングローブ蟹のグリルなどなど。
その後、コロナ禍で出かけられなかったこともあり、今まで食べたことのない蟹や蟹料理に出会う機会に恵まれずにいた。ところが…である。先日、新たな出会いが! しかも、自宅から車で15分程度の近隣だ。
今春開業した大型商業施設「カメイドクロック」の地下に、鮮魚専門店「本庄鮮魚」がある。丸のままの魚がずらりと並んだ対面コーナーでは、刺身や焼魚など、用途に応じて魚をおろしてくれる。パック詰めされた商品も山ほどあって、アレコレ迷ってしまう。
そこで発見したのが、甲幅10センチもないくらいの小さな蟹。名前は「丸ガニ」。何と、1パック6杯入りで300円ちょっとと格安だ。でも、どうやって食べるんだろう? 安いってことはあんまりおいしくないのかな? 考えていると、同店のスタッフが「その蟹、ウマイよぉ~!」と。これはもう、連れて帰るしかない。
さて、まずは調理法をググらねば。さっきのお兄さんに聞けば良かったと後悔しつつ丸ガニを検索。正式名称は「ヒラツメガニ」で、ワタリガニの一種と判明。身はそれほど入っていないが、蟹ミソが美味という。また、10~11月、2~4月の産卵期には、メスは内子も抱えているようだ。
上海蟹のように蒸そうと考えていたが、塩ゆでの方が身に甘みが出るとあったので、ゆでることに。ミソが流出しないよう、甲羅を下にして鍋に並べ、塩水を入れて火にかけ、沸騰してからさらに12~15分ほどゆでたら、ひっくり返して甲羅を上にして冷ます。甲羅が下になったままだと、中に水がたまってしまい、せっかくの蟹ミソが台なしになってしまうのだそう。
あとは食べるのみ。甲羅を外すと、蟹ミソがあふれそう。エラにあたるガニを取り除いたら、胴体を半分に割ってそのままチュパチュパ! う~ん、超美味♪ まだ産卵期とは言えないが、内子の入ったメスもあった。ホクホクでたまらん! これからの季節が楽しみだ。殻が軟らかいので唐揚げも美味らしい。トマトクリーム味のパスタにしても良さそうだ。
こんなに安くて激ウマの蟹がいたなんて! 恐るべし、「蟹かにワールド」の奥深さ。次はどんな蟹に出会えるか?
※宿泊料飲施設ジャーナリスト。数多くの取材経験を生かし、旅館・ホテル、レストランのプロデュースやメニュー開発、ホスピタリティ研修なども手掛ける。