【口福のおすそわけ 423】皮蛋 竹内美樹


竹内氏

 最近、業務スーパーの台湾産皮蛋にハマっている。大好物の皮蛋(ピータン)が業スーに並んでいるのを発見、あまりの安さにビックリ! そして食べてみると、そのおいしさに2度ビックリ? 何たって、4個入りでたったの338円(税抜き)なのだ。ってことは、1個84.5円。しかも、泥みたいなヤツがついていないからむくのもラクチン。また、消費期限が長めだから、買い置きしておけば、ツマミが足りない時スグに用意できる。

 だが、ちょっと苦手という人も多いかもしれない。その理由はきっと、あの独特の臭いだ。そもそも皮蛋とは、アヒルの卵の加工品。塩、石灰、木炭、お茶の煮出し汁、粘土などを混ぜた泥状のモノを卵に塗り、もみ殻をまぶしてかめに入れ密封、半月から数カ月熟成、発酵させる。すると泥の中のアルカリ成分が卵の内部に浸透してタンパク質が変性し、白身は茶褐色で半透明のゼリー状になり、黄身は暗緑色で半熟卵のような状態になる。

 この発酵の過程でアンモニアや硫化水素が発生するから臭いのだが、アンモニアは揮発性だから、殻をむいて空気に晒し、1時間程度放置しておけば臭いは和らぐ。同じ発酵食品の納豆だって、いい香りとは言えないけど気にならないのと一緒で、筆者はむいたら待ちきれずにスグ食べてしまう。ちなみに、黄身がとろりと軟らかくて臭いの弱い溏心皮蛋と、黄身が硬くて臭いも風味も強く、保存性の高い硬心皮蛋の2種類に大別され、台湾産は前者なのだそう。

 鶏卵よりやや硬い殻をむくと、ぷるんと出てくる茶褐色の白身に、雪の結晶のような模様が付いている。コレはアミノ酸の結晶で高級品の証とされる。松の枝のように見えるので、本場では「松花蛋」と呼ばれるという。英語で皮蛋は、百年たった卵という意味でcentury eggと言う。

 それにしても、最初に食べてみた人ってムチャクチャ勇気があると思う。皮蛋の誕生については、諸説あって面白い。主人公は茶館の店主や農家の孝行息子などさまざまだが、いずれも明朝時代ごろとされており、たまたま灰の中に産み落とされたアヒルの卵を数カ月後に発見したら、熟成発酵して皮蛋になっていたというもので、納豆同様偶然の産物とされている。

 その製法は前述の通り手間と時間が掛かるが、消石灰、炭酸ナトリウム、塩、黄丹粉(一酸化鉛)で作ることもできるようだ。この黄丹粉がタンパク質の凝固を促進するのだが、鉛成分が人体に有害だと判明。中国では鉛含有量に基準値が設けられているという。

 ちょっぴり気になったので、業スーのお客さま相談室に電話で訊ねたところ、鉛を使うのは昔の伝統的な製法で、今は違うとの回答。良かった♪…とホッとしたところで、一つ食べちゃおう! 皮蛋豆腐もいいけど、筆者は辛子しょうゆでストレートに味わうのが好み。食わず嫌いのアナタ! うずらの卵の皮蛋からトライしてみては? ヤミツキになることウケアイだ。

 ※宿泊料飲施設ジャーナリスト。数多くの取材経験を生かし、旅館・ホテル、レストランのプロデュースやメニュー開発、ホスピタリティ研修なども手掛ける。

 
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